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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第133回

スマートTVは日本では生まれない

2011年01月19日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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自分で自分のテレビの番組を見るのが「公衆送信」?

 テレビ番組をネット配信するサービス「まねきTV」が著作権を侵害しているとして、NHKと在京民放5社の起こしていた訴訟について最高裁は18日、著作権侵害にはあたらないとした一審、二審の判決を破棄し、審理を知財高裁に差し戻す判決を下した。

 まねきTVは、ソニーの「ロケーションフリー」のベースステーションをユーザーから有料で預かって設置し、インターネット接続するサービスで、被告の永野商店が提供している。ユーザーは海外駐在員が多く、海外で見られない日本の番組をインターネット経由で見るためなどに使われている。

まねきTV自体はそれほど大規模なサービスではないが、今回の訴訟がもたらす影響は広範囲に及びそうだ

 テレビ局はこのサービス差し止めを求める訴訟を起こしたが、一審、二審は「まねきTVはベースステーションの所有者が自分で見るためのサービスで、不特定多数あての自動公衆送信とはいえない」として、放送局の訴えを退けた。これに対して、最高裁の判決理由で田原睦夫裁判長は、

情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たるというべきである。

という判断を示した。つまりあなたが自分のテレビの番組を自分で見るのも「公衆」送信にあたるというのだ。こうした論理にもとづいて、最高裁は「ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人(永野商店)であり、ベースステーションを用いて行なわれる送信の主体は被上告人である」という理由で著作権を侵害しているとした。

 利用者が自分の所有する機材でテレビを見ているのに、機材を置いている業者がサービスの「主体」だというのは奇妙な論理だが、これは「カラオケ法理」と呼ばれる判例である。今までは、まねきTVに類似した録画サービスがすべてこの論理によってテレビ局に摘発されて敗訴したが、まねきTVだけが勝訴した。

 これは利用者の所有する市販の機材に置き場所を貸しているだけという解釈だったが、これも違法ということになると、テレビ局以外の業者が放送を配信・録画するサービスは違法になる。この基準を適用するとケーブルテレビも違法であり、マンションなどの共同受信施設も違法となるおそれが強い。

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