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「Jコミ」は電子書籍市場の起爆剤となるか

「ラブひな」赤松健さん、無料漫画サイト経営にかける「夢」

2010年12月02日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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 「ラブひな」「魔法先生ネギま!」を描いた漫画家・赤松 健氏が26日にスタートさせた、絶版コミックに広告を入れて無料配信するサイト「Jコミ」。初日、「ラブひな」のダウンロード数は30万回を越え、好調なスタートを切った。

 マンガ家自らが、DRM(デジタル著作権保護)フリーでPDFをダウンロード可能とし、再配布・コピーも自由にするという。電子書籍元年と言われた2010年、様々な凝った取り組みが発表された中で、異色とも言えるほど仕組みはシンプルだが、インパクトは大きい。

漫画には雑誌のようにページ単位で広告が入っている

 Jコミ開始を告げるブログ(こちら)では、次のような宣言が挙げられている。

 日本の電子書籍市場は、実はそのほとんどが「漫画」で占められています。だから、電子書籍に広告を入れるとしたら、まず「漫画」を考えるべきなのです。

 サービス開始当日、都内某所の自宅兼スタジオで、その狙いと思いを聞くことにした。だが、記者がスタジオを訪れたとき、赤松氏はやや慌てた面持ちで姿を見せた。


読者、作者、企業
みんなが喜ぶサービスを

赤松 すみません! ちょっとそちらで待っていてもらえますか? 実はサーバーが落ちてしまっていて……。

 そう言い残し、赤松氏は再び事務所の奥に消えた。Yahoo!ニュースで「Jコミ」が取り上げられたことで大量のアクセスが集中し、ちょうどインタビューが始まる時間にサーバーが落ちてしまっていたのだ。10分ほど経ってから、赤松氏は再び顔を見せた。

赤松 とりあえずはなんとかなりそうです。それでは改めて、よろしくお願いします。

仕事場でサイトを確認する赤松健氏

―― 大変なタイミングにお時間を頂いてしまい、すみません。何はさておき、Jコミのスタートおめでとうございます。好評のようで何よりです。まずはJコミの狙いを改めてお聞かせいただけますか?

赤松 これはまず、作家より、読者としてというのが大きかったですね。古いマンガを読みたい、でも意外とブックオフなどに行っても見つからない。オークションなんかだとすごく高い。私が好きな、「冒険王」で連載していたマンガは1冊1000~2000円もする。なのに、そこで買っても、作家には1円も入らない。まずはそれを何とかしたかったんです。

 あとは、WinnyなどのP2Pツールで違法にアップロードされたマンガを読んだ人から感想が来ることも多くなりました。海外からもです。しかも、明らかに「作品が翻訳されていない」国から来るわけです(笑)。

桜多吾作氏の「マッハSOS」(1981)は当時からカルト的な人気があり、オークションでも値上がりしている

―― そういう思いが背景にあったというわけですね。

「コミックガンボ」(現在は廃刊)

赤松 そこで、誰もが考えるのは「広告モデル」なんですよ。以前、「コミックガンボ」という例もありましたよね(2007年1月~12月まで株式会社デジマが発刊していた、無料の週刊マンガ)。

 でも、紙だと、作るのも流通させるのもコストがかかりすぎちゃう。電子出版なら、しかも絶版ものなら、元手もかからないしサーバー代くらいで済む。そこに広告が付くならいけるかもしれないと考え、チャレンジしてみました。


―― しかし、これまでマンガの電子出版では課金モデルが中心でした。紙と同じように1巻いくらとか、あるいは携帯コミックでも1話幾ら、という形でしたよね。広告モデルというのはまだまだ異色ではないですか?

赤松 いまの電子版のマンガって高いですよね。1巻400円とか、紙のマンガと同じくらいの値段になっている。それに、紙とデジタルでは、かかるコストが違うはずなのに、値段や印税率が変わらないのは漫画家として不思議な感じがします。

 もちろん、実際に電子書籍の制作現場を見てみると、単にスキャンして電子書籍のできあがりー、というわけではないというのも十分理解しているんですが。それにしてもこのままで良いのかなー、という素朴な疑問はありました。


―― 「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰先生が運営する「漫画onWeb」は、課金モデルです。そちらはなかなか収益が見えていないともされています。

赤松 作者が自分でスキャンしたり、アップしたり、あるいはシステムの利用料を払う、という形ではなかなか厳しいんじゃないかな、とは感じます。何より面倒だし、赤字になる危険性があります。

 あとは読者目線でいうと、DRM(デジタル著作権保護)の壁は大きいな、何とかしたいなと思っていました。紙なら「このマンガ面白いよ」って気軽に貸せるのに、デジタルだとそれができない。だから、JコミではDRMは一切かけないと決めました。

 出版社の目線に立つと、いま動いている作品――私の場合なら、「魔法先生ネギま!」を講談社さんの週刊少年マガジンに連載していますが――そちらのビジネスには迷惑が掛からないようにしたかった。だから、絶版作品だけを対象としました。

 という具合に、読者/作者/企業の3つのニーズを同時にかなえるのはどんな形だろうと考えて、Jコミを肉づけしていきました。

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