Touch Sessionで触れるノスタルジー
楽器が演奏できるケータイ、ということで、小学校の頃に使っていた童謡などが多数収録されている「うたのほん」を片手に、Touch Sessionを試してみることにした。
Touch Sessionを起動すると、まず世界地図が現れる。スクロールする地図にはピンが打たれていて、その楽器の発祥の国が示されている。その地点をタッチすると、楽器が読み込まれて、画面が演奏モードに転換する。
例えばピアノは、2段で2オクターブの鍵盤が表示され、もちろんスクロールして音程が違う場所を引くこともできる。またギターは6弦が表示され、弦1本ずつを引くことができるほか、弦を押さえて端末を振ればコードを鳴らすこともできる。これはとても簡単にギターを弾いた気分になれる。
そのほかに、ドラムセットをタッチして成らしてみたり、ハンドベルは音を選んで端末を振ればOK。マラカスや日本の事など、世界中の楽器を試すことができるほか、ピアノはピアノでも、エレキピアノやハープシコードなど、演奏形態が似ていて音色が違う楽器も選べる。
【実際の演奏シーン】
まさに、PC-9801のパソコンとMIDIのFM音源のセットのようで、僕が中学校の頃に少しかじっていたデスクトップミュージックの世界が、タッチケータイの中に拡がっていた。
実際、僕もうたのほんで耳慣れた童謡のメロディーを弾いてみたり、コードも楽譜に書かれているので、ギターで伴奏したりして、ひとしきり楽しんでしまった。
マルチタッチとログ記録
しかし、CA001の決定的な欠点は、マルチタッチに対応していない点だ。ピアノも和音が出せないし、ギターも複数の限を同時に鳴らすことは出来ない。その代わり、端末を通常のスタイルで開けば、ダイアルキーから楽器を鳴らすことができるため、ドラムなどを演奏するときはダイアルキーの方が適しているかもしれない。
もっとも、マルチタッチが出来ない一方で、演奏結果を記録することはできる。
まずピアノの右手のメロディーを引いて、それに合わせて右手のコーラスのパートを引いて、2つを重ねた音源を再生しながらギターの伴奏を引く。このようにすれば、1台のCA001で全部自分演奏のセッションも可能。逆に旋律だけライブで演奏すれば、1つのパフォーマンスとしても成立する。
これも完全にマルチトラックのDTMソフトと同じノリだが、それ以上に思い出したのは、32和音に対応した頃のケータイの着メロ編集機能。これも4つのパートを、着メロ本を片手に一生懸命入力して、自分の好きな曲を着メロとして再生させるにこぎ着ける、あの作業を思い出してしまった。もちろん、CA001で作ったトラックは着メロに設定できる。
「ガッキ ト ケータイ」では、楽器のコンテクストを使って、ケータイに新しいインタラクションを持ち込もうという狙いがあることに触れた。しかしCA001を触っていると、新しいインタラクションよりも、DTMや着メロ編集と言った、コンピューターミュージックやケータイ音楽にまつわるノスタルジーを感じてしまった。
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