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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第47回

au楽器ケータイでインタラクション・デザインを追求する

2008年11月14日 21時23分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ケータイも完璧なインタラクション・デザインを得られるか

 「楽器は完璧なインタラクション・デザインを持っている道具だと思う。人間が楽器を使いこなせば、良い音が出て美しい表現が実現できる。インタラクション・デザインをテーマに変えるau design projectにはぴったりの題材だと思いました」(砂原氏)

 ピアノにしても、ギターにしても、バイオリンにしても、感動する演奏を披露する人はいつもその楽器という道具と一体化して我々に語りかけるような感覚がある。敷居は高いかもしれないが、楽器は極限を知らないインタラクション・デザインが追求された道具である。「楽器との対話」とでも言うべき毎日を練習して、楽器の癖も覚えて、いい演奏ができるようになる。

 そしてほかの人と一緒に演奏すると、1つの音楽を作り出すという空間を共有する楽しみが待っている。ガッキケータイを持った人が武道館に1万人集まって同時に音を出したらどうなるだろう。わくわくする想像である。

 ではケータイとのインタラクション・デザインの姿とはいったい何だろう。

 auは2008年秋・冬モデルの発表会で、エージェント機能のベータテストを行なうと発表した。またドコモは「iコンシェル」というサービスをアナウンスしている。どちらも目指すは、自分のコミュニケーションの履歴や位置情報、興味や趣向に応じて情報を語りかけてくれる「かしこいケータイ」の姿である。

 確かにこれによって明示的な「ケータイとの対話」は始まるかもしれない。もっとも、まだまだレコメンドエンジンの鍛錬につきあう必要がありそうだ。

 iPhoneを始めとして加速度センサーやタッチパネルが入り始め、物理的なインターフェイスが変わりつつある。とはいえメール主体の日本のケータイ文化は当分変わらない。となると、文字入力は避けては通れないケータイとのインタラクションになる。これは、楽器がうまく鳴らせるようになる練習と同じように、早く文字入力ができるようになる、という自分の鍛錬も付いて回る。

 もちろん文字入力は必要な鍛錬かもしれない。ただ、もっと簡単、単純なインタラクションがケータイには必要ではないか。それがコミュニケーションになるサービスレベルの発想が必要ではないだろうか。例えば同じテンポで振ってみる、DJプレイのようにこすってみる、叩いてみる。それで人とコミュニケーションが取れたら、毎日触れるケータイの面白さは別の次元に飛躍しそうだ。

 手元にあるauのINFOBAR 2でキー音を有りにしてポケベル入力をしていると、「ピコピコ」といういろいろな音階の音が連続的に出てくる。初めてTENORI-ONを触ったときに出てきたようなサウンドを、日々聞きながらメールを打っていることに気づいた。

 メールを打ちながらキレイなサウンドが出てくると、メールの内容に関係なく気持ちが盛り上がる。ケータイのインタラクション・デザインのヒントは、実はこういうささやかな楽しみがどれだけたくさんあるか、ということなのかもしれない。

 

筆者紹介──松村太郎

松村さん
 

ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET

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