なぜロータリーなのか?
───ではなぜ、内燃機関を使用するときに、レシプロエンジンではなくロータリーエンジンを選択したのでしょうか?
柏木 これは水素を燃料として使うときに、レシプロエンジンに対して、2つの利点がロータリーエンジンにあったからです。まず、水素の着火性をガソリンと比較すると、10倍以上もあります。このために、点火プラグとは別の影響で燃えてしまうことがあります。異常燃焼(バックファイヤー)と言われるものですが、これが発生するとエンジンに致命的なダメージを与えてしまいます。レシプロエンジンは、吸気と爆発、排気をひとつの部屋(シリンダー)で行なっていますが、ロータリーエンジンは、別々の部屋で行なっていますし、着火源になりやすい排気弁もありません。そのために、吸気した水素はプラグの点火できちんと燃焼できるのです。
もうひとつは、ロータリーエンジンが直噴技術を採用しやすいことです。水素は、理論混合比といわれる、空気に対してどのくらいの燃料が必要かという数値において、同じ空気量に対して、ガソリンの15倍以上の体積の燃料が必要になります。そのため、混合気として吸気するのではなく、空気のみを吸入した部屋に直噴インジェクターで水素を入れないと、出力低下が大きくなります。この直噴インジェクターをレシプロエンジンでは設置するスペースがありませんでした。
この2つの問題をクリアできるのがロータリーエンジンだったということです。これに気づいたのが、1991年頃で、それ以来マツダでは水素燃料を使用するにはロータリーエンジンを採用しています。
次のページへ続く
この連載の記事
-
最終回
デジタル
水素×ロータリーエンジンの来し方行く末 -
第5回
デジタル
水素製造の大手に聞く「燃料としての水素」 -
第3回
デジタル
水ロタ車試乗 ハイドロジェンRX-8試乗インプレッション -
第2回
デジタル
水素とロータリーエンジンの基礎知識 -
第1回
デジタル
激化する次世代燃料ウォーズを制するのは!? -
デジタル
激化する次世代燃料ウォーズを制するのは!? - この連載の一覧へ