データ定額付きの珍しい料金プラン
iPhoneの革新性は、料金プランにも見て取ることができる。AT&T(そしてアップル)はiPhoneの発売にあわせて、iPhone専用の料金プランを作ってしまった。それだけでも珍しいが、その上、無料通話時間が違うだけの3種類だけと非常にシンプルでわかりやすい。
さらにどのプランも米国ではまだ珍しいデータ定額となっている。
iPhoneは携帯電話といいながらも、携帯電話キャリアーがもうかるための機能を搭載するのではなく、まずは楽しく使いやすい製品であることを徹底的に追求した。
これにはハードやソフトのデザインだけでなく、料金も関わってくる。「こんなにウェブブラウズしていたら、来月の支払いが大変だ」などとビクビクしていたのでは、とても“いい体験”を持つことができない。だからこそアップルもデータ定額プランにこだわったのだろう。
米国の携帯電話業界には、日本のような公式コンテンツ文化がないので、データ定額制のiPhoneではもうける部分がほとんどない (もっとも、例えデータ定額でなくても、GSM+EDGEのネットワークでは通信速度が遅くて、ほとんどの人が使える限り無線LAN接続を選択することになりそうだが……)。
そうしたこともあってか、iPhoneでは月額の基本料金をやや高めに設定して、キャリアへの旨味を出しているようだ。このキャリアが独占するはずの基本料金からも、アップルが数割を回収するという、これまた前例のない慣行が行われているという噂があるが、これまたアップルなら十分考えられるだろう。
アップルの新しいやり方が“常識”になる!?
iPhoneの誕生によって生まれた、携帯電話の新しい売られ方や料金プラン──こうしたものには今後、他社のスマートフォンなどでも採用され、新しい“常識”として定着する可能性を秘めている。
そうなった時、そうした常識にしばられている他社を尻目に、それらを打ち壊し、また新しいスタンダードをつくってしまいそうなのもアップルかもしれない。同社はMacを通して3.5インチフロッピーディスクを世界に広めたが、その後、iMacでは、どこのパソコンメーカーよりも早くフロッピードライブ撤廃に乗り出した。
アップルとは、そういうことができる会社なのだ。
*後編に続く