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kintoneな人 第7回

インフラ好きから見たkintoneは「すごくセキュアなデータベース」

kintoneにもコスプレにも本気で向き合う池上緑は悩んでいる

2017年09月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: サイボウズ

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アールスリーインスティテュートのエンジニアである池上緑さんは、コスプレエンジニアの「どりぃさん」としてクラウド界隈ではおなじみ。kintoneを仕事にするまでの歩みと試行錯誤、インフラ好きから見たkintone、そしてエンジニアとして、レイヤーとしてこだわっていることなどを聞いてみた。

日本史出身のどりぃさんがプライベートクラウドを構築するまで

 どりぃさんの大学時代は、もともと文学部の日本史専攻で、エンジニアとは真逆の経歴だった。とはいえ、中学時代からパソコンには触れていて、テレホタイムを利用してダイヤルアップ接続でネットサーフィンしまくっていたという。「学生時代は日本史の研究をしつつ、学生にパソコンを教えるティーチングスタッフみたいなのもやっていました。人に教えるのも好きだったので、そういうのを仕事にしたいと思っていました」というどりぃさんは、アルバイトとして働いていた関西のISPにそのまま就職した。

アールスリーインスティテュート エンジニア どりぃさん(池上緑さん)

 その後、働いていたISPがADSLサービスを提供していた親会社にM&Aされたことで、回線開通業務などにも携わることに。さらにPCの出張サポートの会社に転職したことで、今度はヘルプデスクとしての経験も得た。「家電量販店のPCコンシェルジュやマンションのインターネット回線のルーター監視などやっていました。ベンチャー気質の会社だったし、朝から終電が当たり前でとにかく忙しかったです。でも、仕事の幅が拡がったことで、エンジニアになりたいという気持ちが少しずつ生まれてきました」とどりぃさんは振り返る。

 次に転職したのはアールスリーの前職になるホスティング会社で、カスタマーサポートとして採用された。しかも、たまたまエンジニアに欠員が出たため、そちらにシフトした。「手順に従って作業するみたいな初心者でも入りやすいオペレーション系の仕事だったので、エンジニア志望の私にお声がかかったんです。会社としてもサポートからエンジニアへのジョブチェンジは初めてだったみたいです」(どりぃさん)とのこと。

 その後、サーバーの運用からスタートし、積極的に新しいことを試していく姿勢が認められ、最終的にはサービスの企画開発まで任せられるようになった。「ホスティング事業でけっこう売り上げはとれていたんですけど、クラウドも必要だよねという話になったので、VMwareベースのプライベートクラウドの構築をやらせてもらいました。それこそアーキテクチャや設計までやったので、最初は考え方になじむまで時間かかったんですけど、いったんわかると、わりとスッと入るようになりました」ということで、雲の中身もわかるクラウドエンジニアとして成長を遂げることになった。これが今から4年前の話だ。

コミュニティへの参加からアールスリーに入るまで

 そんなどりぃさんに転機が訪れたのは、2014年10月に開催された「八子クラウド」のイベントだった。当時の営業部長が登壇していた関係でイベントに参加したどりぃさんに、今のボスにあたるアールスリーの金春利幸さん、そして当時JAWS-UG関西女子会の運営メンバーを探していた関西女子会発起人の伊藤博美さんと出会うことになる。その後、伊藤さんをはじめ関西の面々に誘われる形でJAWS-UG関西女子会の立ち上げに関わることになり、立ち上げをバックアップしていた金春さんなどJAWS-UG大阪のメンバーともつながるようになった。

 当時はJAWS-UGにあまりなじみがなかったという。「ほかのコミュニティは行ったこともあったけど、JAWS-UGだけは敬遠していました。人数も多いし、内輪で仲いいんだろうなあみたいな先入観もあったし、当時所属していたホスティング会社はむしろAWSの競合だったので、行ってなかったです」(どりぃさん)。しかし、AWS CloudRoadShowに参加したり、JAWS-UG関西女子会を立ち上げる中で、大阪のJAWS-UGメンバーと打ち解けるようになってきたという。

 結果的にどりぃさんは金春さんに誘われる形で2015年、アールスリーに転職。「自分のやりたいことがやりにくくなっていったし、コミュニティにも自由に参加できなかった。そういう息苦しさを愚痴っていたら、金春さんに誘ってもらいました。SIという仕事も初めてだったけど、チャレンジだと思って入りました」(どりぃさん)。考えてみれば、今まで働いてきた会社も「ホスピタリティ」を売りにしたところが多く、アールスリーの「お客様の立場でシステムを開発する」というポリシーも共感できた。どりぃさんは、「カスタマーサポートやヘルプデスクでも、とにかくお客様の立場に立って問題解決することを重要視してきました。その点でも、アールスリーは魅力的でした」と語る。

インフラ側から見たkintoneは「ものすごくセキュアなデータベース」

 こうして2015年にアールスリーに転職したどりぃさんが当初割り当てられたのは、始めたばかりのkintoneのプロジェクトだった。10年以上フルスクラッチの開発をやっていたアールスリーには、kintoneのような開発プラットフォームを扱えるエンジニアが少なかったため、金春さんからは、「お客様の声を聞いてkintoneをカスタマイズできるエンジニアになってほしい」と言われていたという。

 どりぃさん自身はIT系のイベントでkintoneを知っていたが、「ある意味、なんでもできてしまうので、逆にどんなものかイメージが沸かなかった。自分の興味はインフラだったし、違うレイヤーの話だと思っていました」と語る。だが、実際に触り、案件に携わった結果、感じたのは「ものすごくセキュアなデータベース」というインフラエンジニアらしい手触りだった。

取材は大阪にあるアールスリーの一角で行なわれた

 とかくkintoneはアプリが作りやすいとか、カスタマイズ性が高い部分がアピールされているが、堅牢でセキュアな自社クラウドで運用されていることはあまり知られていない。脆弱性検出にも多額の懸賞金もかけているし、ユーザーデータも何重にバックアップがかけられている。「私がkintoneの概要を説明するとき、『こんな堅牢なデータベース、クラウドサービスであまりないよ』とプッシュしますね」(どりぃさん)。インフラエンジニアのどりぃさんならではの観点だ。

 もちろん、開発会社であるアールスリーから見ると、APIを使ったシステム連携やJavaScriptによるカスタマイズ性も魅力的だ。「サイボウズ自体がとにかく簡単にアプリを作れることをアピールしているのでなかなか見えにくいですが、もっと開発者が触れてもいいサービスだと思います。実際、開発者が多いWordPressのコミュニティで話したら、kintoneでそんなことできるんだという反応が多かったですね」(どりぃさん)。

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