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kintoneな人 ― 第8回

数々の大規模なkintone案件を支える経験値と巻き込み力

M-SOLUTIONSの植草氏とkintoneやSI事業、Pepperまで骨太に語ったよ

2017年10月05日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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5分で60枚という高速LTを披露するパワフルなM-SOLUTIONSの植草学氏。kintone界隈では「声の大きい人」というキャラクターがすでに定着しているが、kintoneでの大規模案件を数多く手がける豪腕な人でもある。相棒のPepperを横に、植草氏とkintoneとSI事業について語ったら、けっこう骨太な内容になった。

kintoneをはじめたら、すぐに億単位の案件が来た

 M-SOLUTIONSの前身となるSI会社に所属していた植草氏は、ソフトバンクの孫正義氏の後継者育成・見極めプログラムである「ソフトバンクアカデミア」の第一期生として、ソフトバンクグループの子会社設立を複数経験している。M-SOLUTIONSでもWebやモバイルサービスの立ち上げもしてきたが、基本的には一貫してSI畑を歩んできた。「もともとはプログラマーでしたが、SEやPMも経験して、先日まではCTOです。今は営業まで見るようになったので、今年からCSO(Chief Strategy Officer)という肩書きです。オペレーションはあまり好きではないので(笑)」というマルチタレントである。

M-SOLUTIONS 取締役 CSO 植草学氏

 植草氏が所属するM-SOLUTIONSは、2000年にソフトバンク・テクノロジーのJV子会社として設立され、一貫してSIを手がけてきた。開発は社内システムやWebのフロント、アクセス解析、動画配信システム、スマホアプリまで幅広く、現在はkintoneのカスタマイズや「smart at」ブランドのiPad向けシステム、Pepperアプリの開発などにも注力している。「今は8割くらいがWeb中心のSI事業で、このうち半分以上がkintone事業。昔は情シスが多かったですけど、今は業種問わず事業部門のお客様が増えてます。まさにkintoneの傾向と一致しています」(植草氏)。

 植草氏がkintoneと出会ったのは、今から4年前。「江戸川橋にオフィスがあったときに、当時水道橋で近所だったサイボウズの佐藤学さん(現:グルーヴノーツ)ともう一人で、“学ランチ”をしたんです。そのときに佐藤さんからやりません?と言われて始めました」というきっかけだった。やり始めたら、2案件目に億単位の案件が入り、そこから一気にkintoneのSIを主軸に据えた。

 kintoneというプロダクトだけではなく、サイボウズ自体の社風にも惹かれた。「若いメンバーがチームワークのためにがんばろうという勢いがあるので、そこに共感できたのも大きいです」と植草氏は語る。

お客様に「来週までにやっておいてくださいね」と言えるkintone

 長年SIをやっていた植草氏からすると、やはりユーザー自身がドラッグ&ドロップでシステムを作れるというのがkintoneの衝撃だった。「20年前、われわれが作っていた帳票システムとか案件管理システムを、お客様自身が自分で作れるんですよ。しかもあとから直せるし、コストも安い。なにより圧倒的に速い」とのことで、大きなインパクトだった。

 こうした特徴を持つkintoneの案件ではSIerの役割も今までと大きく異なる。特に小規模な案件ではシステム開発や運用はあくまでユーザーが主体で、SIerは標準機能で実現できない部分のカスタマイズやアドバイザリーと呼ばれる教育・サポートに回ることが多いという。「kintone案件をやるときは、お客様に選択肢を出します。『うちがまるまる開発すると、速く仕上がるけど、これくらいコストかかります。でも、お客様がここまでやってくれればアドバイサリーの金額で済みますよ』といった感じです。これはkintoneだからできることです」(植草氏)。

 アドバイザリー契約だと、「自分で作れるけど、不安なので教えてほしい」という声に応えられる。「お客様に設定手順を教えて、『来週までにやっておいてくださいね』みたいな感じです。今までと逆ですね(笑)」(植草氏)。結果的に案件の手離れも良く、SIer側にもメリットが出る。また、ユーザーとのやりとり自体もkintoneを使ってインタラクティブにやっているので、慣れるのも速いという。

 もちろん、ユーザー自身がシステムを作ったり、直したりできるので、業務にフィットしたシステムが作れる。「SIerも確かにシステムの設計書は作るんですけど、業務部門のお客様も、最終的には使ってみないとわからないんですよね。だから、『ここにフォームを付けたい』とか、『フィールドを入れ換えたい』という声があとから出てきます。でも、kintoneであれば、お客様の声を直接聞きながら設定を手直しできるので、スピーディです」と植草氏は語る。

溜まったプロセス資産のうち、汎用的な機能はプラグインで提供

 開発という立場から見ても、kintoneのPaaSとしての価値は高いという。「共通のAPIで展開されているプラットフォームなので、開発するごとにプロセス資産が溜まってくるんです。そうすると、お客様にすぐデリバリできるので、開発が効率化できます」(植草氏)という。

 こうして溜まったプロセス資産のうち、ユーザーの要望の多い追加機能はプラグインとして提供している。「SI案件をやっていると、お客様から『kintoneのここが困っているんですよねー』という声をよく聞くんです。でも、毎回お客様ごとに少額で追加開発していると、お互いストレスフルになってきます。だったらプラグイン化して、お客様で使ってもらった方がいいなと考えました」というものだ。

 現在、M-SOLUTIONSが提供しているプラグインは「検索」や「集計」など全部9つで、かゆいところに手が届く便利な機能を提供している。「われわれが追加開発すると、お客様もアプリを作るたびに弊社にお問い合わせをいただくことになります。でも、汎用機能をプラグインで提供すれば、お客様も問い合わせしなくて済むし、われわれもプロダクト化できるので、ハッピーです」(植草氏)。

kintone hiveのLTタイム「kintone hack」でプラグインをアピールする植草氏。開発もファストだが、LTもファスト!

 システム開発を生業とするSI企業にとって、ユーザー自身がシステムを作れ、メンテナンスまでできることは脅威にならないのか。小規模案件だと、ビジネスになりにくいのではないか。そんな懸念を「コードを書くのが得意なメンバーもいるし、教えるのが得意なメンバーもいる。お客様も求めているのに、やらない理由はない」と植草氏は一蹴する。

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