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約1年かけたアプリ作成画面の開発の舞台裏を披露

kintoneでこだわりまくるデザインとアクセシビリティとは?

2016年08月03日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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約1年かけたkintoneのアプリ作成画面の刷新

 8月版のkintoneでは「シンプルで統一感のあるデザイン」「操作性の向上」「ユーザーヒアリングによる検証」という3つの原則を元にアプリ作成画面のデザイン刷新を実施した。アプリ名の入力とデータ入力のフォームの配置を決定すれば、すぐに公開できるようになったという。

アプリ作成画面のデザイン刷新を実施。フォームを作って、すぐに公開

 今回のkintoneのデザイン改善を検討し始めたのは、2015年9月にさかのぼる。当初はサイドバー形式でデザインを検討したが、「項目が多すぎる」「作業エリアが狭すぎる」「変更コストが大きい」といった課題があり、いったん断念。10月には作業エリアが確保できるタブ形式のデザイン検討を開始し、プロトタイプの制作に入る。

 その後、日本と上海の20名でヒアリングを実施し、シンプルになったこと、好印象になったこと、既存のユーザーがとまどわないことなどを確認。2015年11月から約6ヶ月は週2回のデザイン定例を実施し、2016年の5月からようやく実装を開始した。ここでは項目の高さや保存ボタンの色や位置、アイコンの変更方法、公開ボタンの名称など最終的なデザイン調整を進め、6月に最終デザインで日米のユーザービリティテストを行なったという。

 結果として1年近くかけ、ようやくデザイン刷新を完了。ユーザビリティテストにより、顧客管理アプリのステップ数や作成時間は30%削減され、ユーザー評価のポイントも旧デザインから向上したという。

すべての人がチームにアクセスするためのアクセシビリティ

 最後に登壇したkintoneの開発・運用担当の小林大輔氏は、「Webアクセシビリティ」をベースとしたユニバーサルデザインの取り組みについて説明した。

ユニバーサルデザインの探求について語る小林大輔氏

 Webアクセシビリティとは「障害者・高齢者を含めて、『すべての人』がWebにアクセスできること」を実現するための規格やガイドラインを指す。弱視の社員へのユーザービリティテストをきっかけにWebアクセシビリティの啓蒙に関わり始めた小林氏は、色覚異常の人でも見やすい凡例を付けたkintoneのグラフデザインを披露。グラフに凡例が付くと白黒印刷したときにもわかりやすいため、障害者や高齢者だけではなく、実は多くの人がWebアクセシビリティの恩恵を受けられることをアピールした。また、単に人だけではなく、デバイスや利用環境も配慮して、アクセシビリティを検討すべきと指摘した。

色覚異常でグラフの見え方もずいぶん異なる

 WebアクセシビリティにはWCAG(Web Content Acceability Guideline)2.0という国際基準があり、3段階のレベルで対応方法が策定されている。米国やカナダ、韓国などではアクセシビリティに関する法整備も進み、日本でも2016年4月から障害者差別解消法という法令で、Webサイトのアクセシビリティ対応が求められている。ただし、民間企業については努力義務となっているため、どうしても優先度が下がってしまう現状がある。

 一方、チームワークあふれる社会を作るという理想を掲げるサイボウズにとっては、ユーザーがチームにアクセスするためにアクセシビリティの対応は重要な要件。小林氏も社内外の勉強会やイベントを通して、アクセシビリティに対する啓蒙活動を続けてきたという。こうした活動の結果、サイボウズ社内でもアクセシビリティへの理解が進み、製品へも反映されつつある。

 小林氏はサイボウズ製品でのアクセシビリティの実装例を披露した。たとえば、文字のコントラスト比やフォームのキーボード操作対応などは国際基準に沿って作られており、すべての人が見やすく、使いやすいユーザーインターフェイスに仕上がっている。もちろん、kintoneの新デザインでもマウスが使いにくい人のため、アプリ管理画面の一部でキーボード操作が可能になっているという。

アクセシビリティ基準に基づいたコントラストの設定

 デザインやアクセシビリティなどへの強いこだわりを見せたサイボウズ。グローバルでのさまざまな環境や幅広いユーザーに向け、あまねく使いやすい製品・サービスを目指す方向性が見えた勉強会だったと言えよう。

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