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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第20回

アクセスが伸びる動画のスペック

2016年05月31日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 「夢はYouTuber!」なんて、子供の職業ランキングに動画配信が入る時代が来るとは思いませんでした。とは言っても、筆者はYouTubeやニコニコ動画の登場もさえも想像できませんでしたが…(笑)。僕らの子供の頃に人気だった夢は警察官とか消防士とか、今思うと両方ともハードそうな仕事。やっぱり制服の魅力なのでしょうか。まぁ、子供から見て、ざっくりとした仕事観がわかりやすかったのかもしれません。もちろん、筆者の仕事であるマジシャンになりたいなんて言ったら、親が激怒しそうな時代でした。

 じつは、このところ投稿動画にはまっています。投稿するほうではなく観るほう。ゲーム実況がほとんどですが、ほぼ毎日観るのがすっかり習慣になってしまいました。むしろ、ゲームの参考というより、観ないと寂しい感じですというか、バラエティ番組のコーナーみたいな感覚でしょうか。

 超人気投稿動画があるいっぽう、面白い動画なのにアクセスが伸びてなかったり、せっかく良い情報を公開しているのに人気がない動画もあります。アクセスが伸びる動画とは、いったい何なのでしょうか。

 筆者はYouTuberなど、動画投稿を仕事にしているわけでないので、あまり偉そうなことは言えないかもしれません。しかし「岡目八目」(おかめはちもく。観戦者は囲碁で八目先が読める、つまり、第三者は当事者より客観的によく判断できること)ってことで、視聴者目線の人気動画のポイント、そのスペックを今回は分析をしてみようと思います。

題材や編集ソフトよりも大事なこと

 真面目な投稿者は「ビデオカメラはどれにしよう?」「編集ソフトやコンテンツの題材は何にしよう…」なんて、最初は悩んでしまいがちかもしれません。しかし、アクセスが伸びる動画は「バカなこと」「くだらないに挑戦」が人気だったりします。「それなら…」、と、バカなことを題材にすればアクセスが伸びると誤解してしまうかもしれませんが、そんな綱渡りのようなコンテンツは炎上のリスクもありますし、すぐにネタ切れになるのは目に見えてます。

 確かに、題材やタイトルは最初にユーザーに検索されるキッカケになるので重要ですが、それよりも配信者のファンになってもらうことがアクセスにつながります。

 以前は、「〇〇で儲けるテクニック公開!」みたいな煽りタイトルや小手先のテクニックだけでアクセスを稼ごうとする投稿者もいましたが、そんな動画はファンもつかず、投稿サイト運営側もピックアップ(おすすめ)しなくなってきました。

動画は時間支配。題材は情報伝達より空気感が大事

 何かのやり方を知ろうとしたり、情報を得ようとして動画にアクセスする人も多いのは確か。しかし、人気動画のほとんどは「面白いから!」とアクセスされるようになってきました。視聴者の趣向が「情報取得から娯楽」にシフトしてきたのは、動画には情報を得るのに再生時間が必要なことが理由の一つです。

 たとえば新聞社のニュースサイトのように、テキストや写真だけなら必要な部分だけを選んで情報を早く得ることができます。しかし、動画の場合、再生画面からは、どこに必要な箇所があるのかわかりにくく、ほとんどの場合、最後まで動画を観る必要があります。10分の動画なら情報取得に10分かかります。そんな動画の欠点が、情報取得から娯楽へのシフトを生んでいます。つまり、題材や情報よりも、飽きさせない、視聴者に不満を抱かせない空気感がより大切になってきました。

友達っぽい雰囲気…でも視聴者はお客様

 投稿者がリアルな友人でもない限り、視聴者は投稿動画をお客さん気分で観ています。「ツマンネー!」なんてコメントしちゃうのもそんな理由。かといって、企業が作る真面目な解説動画もつまらない。視聴者に親しみを持ってもらい「新しい動画がアップされているかなぁ…」とファンになってもらうには、また会いたくなる友達のように感じてもらわなければなりません。

ちゃんと見せる、はっきりと喋る

 アクセスの明暗を分けるのは、何を伝えたいのかわかること。アナウンサーや声優のように話す必要はありませんが、声が良かったり、滑舌がいい、説明が上手いことは動画の大きなメリット。当たり前ですが、何を伝えたいのかが視聴者にわかること。そんな誠実さと明快さな必須かも…。

 アクシデントも投稿動画ならではですが、全体の流れも考え、ある程度編集されたり、ワイプ(小さなウィンドウに投稿者の顔が表示される)、など、構成が整理されている。そんな動画がアクセスを集めているようです。そんなスキルは練習で上達しますので「素質がないかも…」なんて諦めないこと、ネガティブな評価も気にしないことも大切かもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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