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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” ― 第24回

コンテンツからコンテンツは作れない-ネット時代に求められるコンテンツのスペックとは?

2016年07月26日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 今書いている原稿もそうですが、締め切りが迫ってくると、ついやっちゃうのがネットで他のコンテンツを見てしまうこと。誰かの面白そうなコンテンツをチャチャッと書き直して、自分のコンテンツにしてしまう…、そんな誘惑を感じたことはないでしょうか。

 結論から申し上げると、コンテンツからコンテンツを作ることはできません。これは料理を材料にして別の料理を作れないことと同じです。料理は野菜や肉などの食材から作らないとちゃんとできない。

 「市販のレトルトカレーでカレーうどん作っちゃった!」みたいに、一人暮らし的な発想は、コンテンツには使えません。小学生の夏休みの宿題ならまだしも、原稿料をもらうプロはもちろん、ネット社会では禁じ手になりつつあります。

 少々、説教くさい冒頭になり恐縮ですが、リスクマネジメントとして考えれば、大なり小なり『パクリの代償』が誰にとっても致命的なのは、近頃の炎上案件を例に出すまでもなく、皆様ご承知かと存じます。ネットが普及したことで多くのユーザーが検証でき、ネタが確定すれば、拡散、炎上するのは、もはや日曜日の夕方に「サザエさんが裸足で駈け出す」ごとくの当然の帰結になっています。

コンテンツは、自分の頭で反応した、自分なりの表現

 コンテンツとは、自分の頭で反応して、自分なりに表現したものです。パクリでもなく、誰かの受け売りではありません。あと2つほど、必要な要素がありますが、それは後述します。

 批評や主張、分析にしても、多くの人が気がつかないかもしれないポイントに気づき、自分なりのベストな方法で表現することです。例えば、先日の参議院選挙の結果を見て「自民党は、憲法改正を焦点にせずに勝利したので、国民から改憲発議の承認を得られたわけでない」なんて主張が登場しました。このコメント、コンテンツとしては面白い視点と表現です。もしかしたら「なるほど!」と感じ、同じことを居酒屋でつい語ってしまいそうになるかもしれません。

 しかし、この奇妙な主張には、コンテンツにとって大切な次の要素が欠落しています。

周囲をちゃんと見ること、論理性があることもコンテンツには重要

 いかに面白い視点であっても、周囲(社会)を見ていなかったり、論理的に整理されていなければ、ユーザーの役には立ちません。上のフレーズでは「自民党の立党からの党是(党の根本方針)が憲法改正」であり、それが周知されていること、「改憲の手続きは国会での発議の後、国民投票にかけられる」ことを冷静に考えれば、論理破綻しています。

 つまり、普通に考えれば、上のフレーズは、自分を応援してくれた人や野党内に向けられた発言であり、そうした人たちにカタルシス(心の中の鬱積の解放)を与えるためのコンテンツ内容と考えるのが自然でしょう。つまり、社会全般に役に立つものではありません。

 こんなふうに、コンテンツに必要な要素がわかると、自分でコンテンツを制作する時に役に立つだけでなく、他のコンテンツの良し悪しがわかるようにもなるのが面白いところです。

メディアやコンテンツの判別がさらに加速

 最近はオンラインのコンテンツ(新聞記事やエッセイなど)にコメントが付けられることが増えてきました。少し前までは、ポータルサイトで紹介される大手新聞社の記事にはコメントが付けられないことが多く、ユーザーはモヤモヤした読後感を持て余したり、自分のブログで感想や批判を書くしかありませんでした。

 しかし、そんなオールドタイプの一方通行的なコンテンツから、ネットコンテンツの特性であるコメント欄の設置やSNSと連携させるなど、双方向性のあるコンテンツにシフトしてきました。

 若い世代が新聞を読まずに、ニュースサイトを活用するようになったのは、スマートホンの普及だけでなく、インタラクティブでライブ感(ツッコミと言った方がいいかもしれません)のあるコンテンツにリアルさを感じることが理由だと筆者は分析しています。

 同時に、アクセス数がコンテンツ発信者の収入に密接に関わることから、羊頭狗肉的なタイトルも増えてきました。いわゆる、大げさに煽る週刊誌的手法です。ユーザーは、リンクを期待してクリックするものの、タイトルと内容の違いにがっかりするというわけです。最近はそうした手法はYouTubeに移行してきています。

 しかし、そうした煽りタイトルのコンテンツのアクセスは長続きせず、1回の投稿で100万ヒットをするような人気ユーチューバーは、上で紹介したような「自分で感じたことを、自分なりの表現ですること」「企画の斬新さ」「構成のシンプルさ」で勝負しています。

 もし自分の発信するコンテンツが「いい内容なのに、受けが悪い(アクセスが伸びない)」と感じるとしたら、「独創性(自分の考え、自分の表現)」「社会性(それがユーザーに求められているか?)」「論理性(流れが整理されているか?)」を見直してみるのも良いかもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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