フルレンジスピーカー向きの強い磁性流体を開発
―― それでいよいよ磁性流体とは何ぞやという話なんですけど。この技術は今までソニーさんでは使われています?
関 弊社でと言うよりは、ツイーターと呼んでいる高域用の小さいスピーカーには従来から使われています。磁性流体自体も1960年代には開発されていますので、特に目新しいものではないです。
―― と言われましても、我々一般人にはすごく目新しい感じがするんですが、これは何なんでしょう?
関 まず通常スピーカーというのはですね、まあこういう風になっていまして。
関 それに対してこれは磁性流体を使っているスピーカーです。
市村 これは海外のメディアには見せているんですが、本邦初公開ですから。
―― ほーっ、磁性流体はここに付いてるんでしょうか?
岡 あっ、そこは触らないほうがいいです!
―― えっ!
関 触ると手が黒くなりますから。いまお見せします。これが磁性流体です。この瓶の中に入っているものが。
―― おお、これが!
関 元々はNASAが開発したもので、磁石の細かいものが液体に溶けている状態と思っていいんですね。なので磁性体を近づけると、それに追従してくるんです。
―― おっ、これは結構な力で磁石が引っ張られますよ。
関 ただ、これをフルレンジで使おうとすると、どうしてもスピーカーの動きが激しいので、耐久性が問題になります。飛び散ってしまったりとか。それを私の所属している音響設計部に、この磁性流体の研究をしている人間がおりまして、特別にスピーカーに適した磁性流体のチューニングに成功したんです。それがどれくらいのものか、これで試していただきたいんですが。
―― これはさっきのより全然強力! しっかり容器を手で持たないと、磁石にぶつかって割れそうですね。これは磁性流体の磁力が強いということですか?
関 磁力が強い上に追従性があって、スピーカーの激しい動きにも耐えられるようなアレンジをしています。
後編に続きます
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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