音場感やレンジの広さが目指す方向
―― 競合製品に比べて音質はすば抜けていると思うんですが、当然リサーチはされているわけですよね。この市場の現況をどう捉えられていますか?
岡 商品企画をやっている立場からお話させていただきますと、Bluetoothスピーカーで音がいいものは世の中にはそれほど多くない。特に国内の製品ではそうだと思うんですが、スマートフォンで音楽を聴くという需要は、世界的にも日本国内でも相当大きくなっています。メールをしながら、YouTubeを見たり、音楽を聴けるという便利さもあって、Bluetoothスピーカーの需要は拡大していくだろうと。そこに今までなかった音のいいポータブル機を作りたい。そこから企画はスタートして、この形になっていると。いま途中を相当省きましたけれども。
関 ははは。相当省きましたね。
―― ではその途中の話をしましょう。開発期間はおうかがいしてよろしいですか?
関 いつも短くて困っているんだけど、でも1年はかかっていないよね?
岡 そうですね、1年くらい前です。
―― 結構早いですね。海外のメーカーでいろんな製品が出てきて話題になり始めたのも、ちょうど去年の今頃だったと思うんです。その頃は小さいのに低音がすごく出るとか、喋るとか、まだガジェット的な面白さだったと思うんですが、そこにBOSEのSoundLinkのような本格的なものも出てきた。
関 その辺は意識しなければというのもありましたね。ソニーはオーディオメーカーですから、録音した音をいかに忠実に再生できるようにするか。そういう意味では、音場感やレンジの広さというのが、我々の目指すべき方向だろうと考えました。
メインユニットから独立したサブウーファー
―― まず全体のサイズに対してこの薄さにびっくりしたんですが、これは音響設計的にヤバくないですか?
関 ええ、ヤバイです。基板と電池が入って、しかもスピーカーが入ってこの大きさにしなければならないですから。
岡 そこが企画からの要求と、設計サイドで戦う場所でもあるわけです。
関 私は音響屋なので、スピーカーとしての容積や、ユニットのサイズのように、目指す音がこうだとなれば、必要な条件も決まってくる。すると「このデザインではまとめられないよ!」 というところから始まってしまうわけです。それでギリギリまで小さくして、かつ、いかに目指す音を得るか。これが戦いの始まりなんですね。
―― パッシブラジエーターの他に独立したウーファーを入れているわけですけど、ほかのメーカーの製品でそういうのはないですよね。
関 そこはですね、今日は出し惜しみをせずにいろんな物を持って来ましたので(と、外装部品を外したBTX500が登場)。
―― おっ、中身はこうなっているんですか!
関 この磁性流体を説明するためのキットとかもですね。
―― おお、これが噂の磁性流体!
関 ここは絶対聞かれると思ったので、小物をいろいろと。
―― あ、でも後で整理するのが大変なので順番にお願いします。
市村 じゃあ、まずは低音から。
岡 今の楽曲は打ち込み系もありますし、ヒップホップだのR&Bだの、とにかく録音がすごくシビアになっている。それで小型のスピーカーになればなるほど、低域をどう出すかが問題になる。出せないんですよね、物理的に。それを出すために、位相反転と呼んでいるバス・レフレックスのような考え方で作ってきたんですが、どうしても今の録音だと「バフバフ」という風切り音みたいなものが避けられない。
―― 今どきのソースは低域の音圧が高いですからね。
関 パッシブラジエーターという考え方は昔からあるんですけど、小さいサイズでまとめるという発想はなかった。それをこういう形で配置をしてみると、面積をしっかり稼ぐことで、同じ位相反転という仕組みでもバスレフではできない低域感をしっかり出せる。そのためにはウーファーだけでは駄目で、いかに中の容積を最大限パッシブラジエーターに振り向けるかということになりますね、しっかり圧をかけて。
―― よそのメーカーのはメインユニットの背圧でパッシブラジエーターを駆動しているんですが、BTX500はウーファーが独立してパッシブラジエーターを駆動しているわけですか?
関 そうですね、サブウーファーという形できちんと作ってあります。この部分は写真はちょっとごめんなさいなんですが。
―― わかりました、ではEyes onlyで(現場ではバッフルボード裏の構造や回路を見せてもらっていますが、撮影不可のため次のページはテキストで様子をご想像下さい)
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