ミラーレス一眼カメラ市場で首位を狙わないキヤノン
キヤノンマーケティングジャパンの川崎社長は、「写真を撮ることは日常的となり、数年前には想像もつかない数のシャッターが押されている。そのなかで、写真の魅力に気づき、もっといい写真を撮りたいというお客様が増えている。とくに、ミラーレス一眼カメラは、2008年に登場して以来、急速な伸びを示している。小型、軽量、簡単かつ手軽に撮れるところに特徴がある。日常生活のなかでもっといい写真は、もっと身近に楽しみたいと願う生活者の気持ちが表れている」と語る。
同社の調査によると、一眼カメラならではの「ボケ味」を、購入理由としたユーザーは、一眼レフカメラでは18%だったものが、ミラーレス一眼カメラでは30%に達しているという。また、約6割のユーザーが交換レンズの購入意欲があるという。こうした数字からも、もっといい写真を撮りたいというユーザーが、コンパクトカメラを選択せずに、ミラーレス一眼カメラを購入していることがわかる。
また、キヤノンマーケティングジャパン 取締役専務執行役員イメージングシステムカンパニープレジデント・佐々木統氏は、「EOS Mのターゲットユーザーは、20~30代のエントリー層。カメラや写真に目覚め、持ち歩けること、日常で気軽に撮影できることを求めているユーザー層となる。さらに、写真にこだわるEOSユーザーが、EFレンズの共用により、一眼レフのサブカメラとして購入するだろうと考えている」とする。
エントリー層向けという点では、EOS Kissとの競合も懸念されるが、「EOS Kissは映像などを楽しみたいといった層にもターゲットが広がっている。一部での競合はあるだろうが、ユーザー層を棲み分けることができると考えている」(川崎社長)とする。
満を辞した製品ではない!?
だが、ミラーレス一眼カメラ市場に対するキヤノンの姿勢は慎重である。
キヤノンのレンズ交換式デジカメ市場におけるシェアは、2012年度上半期実績で35.3%とトップシェアを維持。交換レンズでも34.4%と首位獲得しているが、「ミラーレス一眼市場においては、まずは15%のシェアを狙う」(キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役社長・川崎正己氏)と、やや弱気ともとれる数値目標に留まっている。
第2グループの一角に割り込むというのが当面の目標であり、いつもながらの「首位」という強気の言葉が、ことミラーレス一眼市場に関しては、キヤノンの経営トップからはまったく聞かれないのだ。
また、キヤノン 常務取締役イメージコミュニケーション事業本部長・真栄田雅也氏も、「EOS Mは、決して満を持して投入したわけではない。やっと開発できたもの」と異例のコメントを発する。
「一度、このサイズのカメラでの製品化を止めた経緯もある。そして、ダウンサイジングとEOSならではの高画質を両立するのが難しかった点も大きい。このタイミングになったは、マーケティング的な観点ではなく、EOSとしての基準をきちっとクリアした製品が、やっと出来たからだ」と語る。
価格は他社のミラーレス一眼カメラよりも、若干割高だが、これも「EOSの1機種として、十分性能に見合う価格だと判断している」(キヤノンマーケティングジャパン 取締役専務執行役員イメージングシステムカンパニープレジデント・佐々木統氏)と、やはり画質を優先した結果であることを示す。
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