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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第33回

モバイル向けの強化と有機ELへの応用を発表

シャープ復活の狼煙、その切り札となるIGZO技術とは?

2012年06月08日 09時00分更新

文● 大河原克行

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シャープの最新状況は、「2年連続の巨額赤字、シャープ社員の自信回復のカギとは?」もご覧下さい。(2013年6月26日)

シャープは、酸化物半導体であるIGZOに関して、新たな技術を開発したと発表。今後、同技術を全面的に採用していく姿勢を明らかにした。

 新たに発表した技術は、「CAAC(C-Axis Aligned Crystal)」と呼ばれるもので、シャープと半導体エネルギー研究所(SEL)が共同で開発。酸化物半導体の新たな結晶構造を採用することにより、IGZOの物性を安定化。さらなる高精細化、プロセスの簡略化、応用展開の広がりが可能になるという。そして、「IGZO技術はモバイル液晶技術のコアテクノロジー。モバイル液晶の成長エンジンになる」(シャープの水嶋繁光副社長執行役員)というように、IGZOが低迷する同社業績回復の切り札になると期待しているのだ。

新IGZOとなる4.9型液晶ディスプレイの試作品(左)と、6.1型液晶ディスプレイの試作品

1画素あたりの透過量が高まり、同じ透過率で2倍の高精細化も

 では、IGZO、そしてCAACとは、どんな技術なのだろうか。

 IGZOとは、シャープが、2002年から開発に着手していたもので、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)から構成される酸化物半導体「IGZO」を採用したものだ。

 1985年に、科学技術庁無機材質研究所の君塚昇博士らが、世界で初めて結晶IGZOの合成に成功したのがはじまりだ。

 IGZOを採用した液晶パネルは、従来のアモルファスシリコンを利用した液晶パネルに比べて、薄膜トランジスタの小型化と、配線の細線化を図ることができる。薄膜トランジスタの小型化などによって、1画素あたりの透過量を高めることができ、同じ透過率であれば、2倍の高精細を実現できるようになる。

 これを実現するのが、IGZOの移動度の高さだ。

 移動度とは、固体物質中での電子の移動のしやすさを量で示す「電子移動度」のことであり、IGZOは、アモルファスシリコンに比べて、20~50倍でON電流を流すという移動度の高さが特徴だ。

 さらにOFF抵抗が高く、アモルファスシリコンに比べて100倍、低温ポリシリコンに比べて約1000倍というOFF性能を持つという。このOFF特性を生かすことで、画像が変化しない際には書き換えない休止駆動を採用した新規駆動方式を採用することが可能であり、これがアモルファスシリコンに比べて、5分の1~10分の1という低消費電力を実現することにつながっている。

 OFF性能が高いということは、休止期間から立ち上がったときに、フリッカーがない状況を生み出すことが可能になるため、こうした新たな駆動方式を採用できるだ。

 通常、アモルファスシリコンでは、画像が変わらない場合でも60分の1秒から30分の1秒ごとにデータを書き換えていたが、画像の種類によるものの、IGZOではこの書き換え回数が少なくなるために、低消費電力化が図れるというわけだ。

32型の液晶ディスプレイの試作品。4Kの解像度を持つ高精細ノートPC向けの10型IGZO液晶パネル

 また、タッチパネルの高性能化においても、IGZOは効果を発揮する。

 従来のタッチパネルでは、常に液晶パネルが駆動していたため、ノイズが発生しつづけ、タッチパネルの検出性能に影響を与えていたが、IGZOを採用した新たなタッチパネルでは、休止期間はノイズが発生せず、タッチ信号を認識しやすくなり、その結果、高感度で、スムーズな操作が可能になるという。

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