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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第32回

外国人社長体制による日本IBMの変革

日本IBMの突然の社長交代にみる真の狙いとは?

2012年04月05日 09時00分更新

文● 大河原克行

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 日本アイ・ビー・エムは、2012年5月15日付けで、橋本孝之代表取締役社長執行役員が取締役会長に、新社長にマーティン・イェッター氏が就任する社長人事を発表した。

日本IBMの橋本孝之社長(左)と、新社長に就任するマーティン・イェッター氏(右)

 イェッター氏は、現在、米IBMのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデント兼エンタープライズ・イニシアチブ担当ゼネラル・マネージャーを務めており、2006年~2011年までは、ドイツIBM社長を務めた経験を持つ。年齢は52歳。橋本社長から5歳若返る。

 また、北城恪太郎最高顧問は相談役に就任。大歳卓麻会長は最高顧問に就任する。

 米IBMは創業から101年目を迎えており、次の100年のスタートとなった2012年1月1日付けで、同社初の女性CEOとなるバージニア・M・ロメッティ氏がCEOに就任している。一方、日本IBMは、今年、創業75周年を迎えており、同社としては2人目の外国人社長を迎えることになるが、1959年に現在の日本アイ・ビー・エム(日本IBM)に社名を変更してからは初の外国人社長となる。

日本の顧客の課題に対応するのが自らの役割

社長に就任するマーティン・イェッター氏

 マーティン・イェッター氏は、ドイツのシュトゥットガルト大学で、工学部学士課程、機械工学の修士課程を修了。1986年にアプリケーションエンジニアとして、IBMのインダストリアル事業部門に入社。IBMの中東ヨーロッパのグローバル・ビジネス・サービス事業担当、シーメンスとのグローバルビジネスの責任者、プロダクト・ライフサイクル管理部門のグローバル・リーダー、ドイツ・オーストリア・スイスのインダストリアル事業などを担当。IBMの北東ヨーロッパ地域のグローバル・ビジネス・サービス事業の責任者として、イギリス、アイルランド、北欧、ドイツ、スイス、オーストリア、東欧、ロシア、中央、南アフリカ地域を含む50カ国以上のコンサルティング、システム統合およびアプリケーション・サービスを統括してきた経験もある。

 さらに、2006年からは、ドイツにおけるIBMビジネスの責任者として、4年以上にわたりドイツIBMの社長を務め、2011年5月から米IBMコーポレーションのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデント兼エンタープライズ・イニシアチブ担当ゼネラル・マネージャーとして、IBMの全社的な戦略ならびに企業向け施策を立案。この実行に至るまでの責任者を担っている。

 「もっとも興味深かった仕事は、当時のルイス・ガースナーCEOのもとで、エグゼクティブ・アカウント(補佐役)を務めたことだった」と、IBMの改革を目の当たりにしてきたことが、自らの財産であることを示す。

 「いま、日本の多くのお客様が課題に直面している。私はその課題に対応するために日本IBMの社長に就任したと考えている。課題に対応するためには、従来型のビジネスモデルでは難しい。政府も中規模な新たなサービスを創出し、新たな雇用を生む必要があるなど、企業に留まらず、政府もビジネスモデルを変えなくてはならない。一方で、世界経済がグローバル化して、あらゆる国や企業が、経済的にも相互依存する関係にある。これは日本に限らないものである。コーポレート・ストラテジーリーダーとしての経験や、ドイツIBMの経験をどう生かすことができるか。これは、IBMがこれらの課題にどう対応できるかのトライアルでもある。私の経験を、日本のお客様の変革に結びつけ、課題解決だけでなく、新たなチャンスを獲得する機会を得るためのお手伝いをしたい」と語る。

 これまで勤務経験がない日本IBMでの社長に就任することについては、「ビジネス、文化、経済でドイツと日本は共通点が多い。成熟市場であること、自動車をはじめとする製造業が経済を支え、その産業において多くの競合があること、品質やチームワークを重視する国であること、そして、ドイツ法人、日本法人ともに、IBMへの貢献が大きいことも共通点である」として、ドイツIBMでの社長経験が日本市場に生かせると読む。

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