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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第34回

「1+1が2以上になった初めてのケース」の理由

NEC PCとレノボの合弁はなぜ成功したのか?

2012年07月06日 09時00分更新

文● 大河原克行

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 NECパーソナルコンピュータとレノボがジョイントベンチャーを開始して、ちょうど1年を経過した。

 NEC レノボ・ジャパングループのロードリック・ラピン会長は、「IT産業における数々の合弁のなかで、1+1が2以上になった初めてのケース。私自身、この1年の成果は、100点満点以上だと自己評価している」と語る。

NEC レノボ・ジャパングループのロードリック・ラピン会長

 1+1が2以上になったとする根拠は、国内における市場シェアである。

 両社の合計シェアは、最初の四半期で26.4%に達し、合弁前のシェアを上回っているほか、2012年度の出荷台数は前年比6%増、年間売上高は11%増となっている。

 「3年後のシェア30%獲得に向けて、これからも魅力的で革新的な製品の投入、顧客満足度の向上に取り組む」と語る。

 

外資ならではの課題を抱えていたレノボ

 振り返れば、両社にはそれぞれに課題があった。

 レノボ・ジャパンは、着実にシェアを拡大してきたが、外資系企業ならではの壁にぶつかっていた。

 それは、法人向けPC市場における納期の問題や、サポートの問題であった。

 レノボ・ジャパンは、コンシューマ向け製品も投入しているものの、国内における主要ターゲットは法人向けである。

 その市場において、短期で納めることができる体制の確立や、販売後のサポート体制に関しては、国内メーカーに比べて遅れていた。外資系メーカーと比べても、納期の点では、東京生産を打ち出す日本ヒューレット・パッカードの方が、優位性があるといえそうだ。

 だが、これに対応するための体制を作ろうとすると多くの投資が必要になる。デルがその体制構築に踏み出せないのはそうした課題があるからだ。 サポート体制についても、レノボは、従来は日本IBMに委託していたが、これ以上サポート体制を強化しようとすると、それに向けた追加投資が必要となり、事実上、改善に踏み出せないままでいた。

 しかし、NECパーソナルコンピュータとのジョイントベンチャーをスタートさせたことで、PC市場においては国内最大規模の生産体制およびサポートインフラを整えるNECパーソナルコンピュータのリソースを活用できるようになる。

 実際、2011年10月から個人向けPCのサポート窓口業務を、NECパーソナルコンピュータに移管。それ以降、顧客満足度を向上させることに成功している。2012年7月30日からは、新たに法人向けのサポート窓口業務もNECパーソナルコンピュータに移管し、個人、法人ともに、強固なインフラのもとでサポートを行えるようにする。

 加えて、納期の改善という点では、今年秋からは、NECパーソナルコンピュータの米沢事業場で、ThinkPadの生産を試験的に開始。今後、量産化についても検討を行うことになる。

 ここでは単なるキッティングに留まらず、専用の生産ラインを敷いたアセンブリ体制を確立することになり、国内生産による短納期のメリットを打ち出す考えだ。これによって、法人向け市場における存在感をさらに高めることが可能になるだろう。

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