「カルト的」の定義は「社会的害悪か否か」
―― そのコンセプトを体現したのが、「やや日刊カルト新聞」なんですね。
藤倉 そうですね。そういう体裁でやろうと具体的に考えるようになったのは2008年頃でした。当時、僕はオーマイニュースで「プロ記者」をやったりもしていたんですけど、あれは基本的には、プロではない多くの「市民記者」が記事の多くを執筆していた。そういう感じで、カルト系のニュースがちょっと軽いノリで書ける記者を募って、ひとつのサイトでやれたらいいなと。オーマイニュースの劣化版……市民メディアもどきみたいな。
ただ、一番最初は広告収入で「やや日刊カルト新聞社賞」を開催するくらいしか決めていませんでしたけどね。カルト系のネタで多少ふざけたことやっていても、まじめに問題に取り組んでいる人を表彰したら、みんな許してくれるんじゃないかと(笑)。
―― ちなみに、サイトで扱う「カルト」はどんな定義で線引きしているんですか?
藤倉 僕が「カルト的」と捉えているのは……大雑把にいえば、団体内でメンバーの人権を踏みにじったり、世の中にちょっかいを出して害をなしたりする集団ですね。オウム真理教みたいなテロ行為までしているなら、誰がどう見てもカルトじゃないですか。ただ、刑事訴訟までいかずに、民事訴訟レベルの迷惑をかけている団体もけっこう多いんですよね。そこまでを範囲に入れています。
逆に、教義のトンデモ度は関係ないんですよ。重要なのは実際の行動。伝統宗教の教義を掲げていても、たとえば組織ぐるみで信者に性的被害を及ぼしているようなことがあれば、それはカルト的じゃないですか。彼らが何を信じていようがどうでもよくて、組織の内外に対して反社会的なことを行なっているか否か。社会的害悪になるか否か、というところだと思っています。
カルト的な団体というのは、たとえ悪意はない場合でも、世間で自分たちがどう見られているか理解してないことが多い。そういう団体が、そのまま選挙に出たり勧誘活動をしたりして世の中にちょっかいを出せば、単に煙たがれるだけではなく、実害を伴った「カルト問題」になっていきやすいんです。
―― なるほど。となると藤倉さん達の取材相手は、社会通念を超えた抗議活動もしてしまう“と思われる”集団といえます。そういう団体を取材する怖さはありますか?
藤倉 うーん、そこは昔からあんまり感じたことがないんですよね。直接脅されたり、弁護士に相談する段階までいったりもしましたけど、具体的に身の危険を感じるようなことはありませんでした。学生時代、某宗教団体のグルさんから大学の学長の自宅に内容証明が届いたときは、少しビビりましたけど(笑)。
まあ、色々書かれる側からしても、僕らは「洒落にならない脅威」にはなっていないと思うんですよ。一線を越えて、リスクを負ってまで潰さないといけないような危険な存在じゃないだろうし、ぼくらみたいなふざけた「新聞」を潰すために犯罪まで犯すようじゃ、さすがに恥ずかしいんじゃないですか?
―― 身を置いている界隈での自分自身の位置を見定めれば、正体不明のタブーに対するヘンな恐怖はわかず、具体的な対策を淡々とこなせるという。
藤倉 そうですね。世間一般じゃカルト問題はタブーという印象が強いですけど、批判活動している人はけっこう多いんですよ。そのなかで僕らは先端を走れているわけではなく、ただちょっとコミカルに見せることで目立っているだけ。そういう位置にいるんですよね。もちろん、それでも物理的な危害が及ぶリスクも含めて、常に準備しておかないととは思っていますけど。
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