二つ目は「Power Media Dock」の存在だ。ある意味こちらこそ、Z2のアイデンティティーであるといえる。
ZシリーズはパワフルなCPUを搭載することと同時に、ディスクリート(独立)タイプの(比較的)パワフルなGPUを搭載することが伝統だった。バッテリー駆動時間を最適化するために、ディスクリートGPUから内蔵へ切り替えるためのスイッチまで用意されていたほどで、これは外観上のアイデンティティーともなっていた。
だが、Z2は本体内にディスクリートGPUを持たない。本体だけで利用する場合には、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000を使うことになるが、Power Media Dockを接続した場合には、こちらに内蔵されたRadeon HD 6650M(ビデオメモリー1GB)が使われる。
GPUが違うのだから、パフォーマンスは当然異なる。あくまで試作機での評価だが、Windowsエクスペリエンスインデックスは本体のみの場合、GPUがボトルネックとなり「5.7」となる。だがPower Media Dockを使った場合は、メモリーがボトルネックで「5.9」。グラフィクスだけをピックアップすれば「6.8」とかなり高い値を示す。
「ディスクリートGPUが欲しくなるのは、マルチディスプレーで使いたい時やゲームをやりたい時など。そんなシーンは非モバイル環境であることが多い。ならば、熱源にもなるGPUは外へ出してしまって、用途を分けよう。Sandy Bridge世代の内蔵GPUは性能が上がったので、モバイルなら以前ほど不便を感じるシーンは減ったはず……」。開発陣の意図はそういったところだろう。
どうせ外付けにするのだから、ドック側には「据え置き的用途」で必要になるものをまとめてしまえばいい。HDMI出力やアナログRGB出力、LAN、USBなどのほか、光学ドライブ(店頭販売モデルはDVDスーパーマルチドライブ)までを入れたのが、Power Media Dockということになる。
GPUのように高速なバスアクセスが必要なデバイスを外付けにする場合、従来ならば「ポートリプリケーター」の形をとっていた。チップセットとの経路を短くしなくてはいけないし、シンプルな端子にすることも難しかった。
だがPower Media Dockの場合は、「Light Peak」と呼ばれる高速シリアルバス規格をベースにした技術を使っているため、USB 3.0コネクターと兼用になった独自端子から、ケーブルで光学ドライブをつなぐような感覚で利用できる。本体側に「ゲタ」をはかせないので、ポートリプリケーター形式よりは使いやすい。開発側の想定通り、「宅内利用ではGPUを使う」人ならば受け入れやすい構造である。もちろん、そうでない人には「1台2役」的なVAIO Zのポジションから、後退したような印象を受けるかもしれないが。
なお、Z2には持ち運び用とPower Media Dockをつないだ場合用に、2種類のACアダプターが用意される。店頭モデルにはPower Media Dockが付属するので、ACアダプターも2つ付いてくることになるわけだ。小型といっても極端に小さいわけではないが、こちらをカバンの中などに入れておき、普段はPower Media Dockをつないで使う、という使い方ができるのは便利である。
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