変化はメインストリームではないところからやってくる
直球で「愛」とは言わない! 背中で語るアニメの美学 【後編】
2010年10月30日 12時00分更新
「シリーズ」ではなく「各話」の脚本を
―― 「脚本の温度が低い」というお話でしたが、熱い若者たちの一方に、桜井のような冷めた目線の人物を配置していますね。ご自身では、温度が低いという脚本の根底に何があるのだと思いますか。
大西 当たり前に存在しているものを、ちょっと脇から見たらどうなるだろう、というのは結構考えますね。私は特撮が好きなんですけど、中でもSF短編モノが好きで。「ウルトラQ」「アウターリミッツ」「ミステリーゾーン」なんかは、現実世界をちょっとだけずらしてみたらどうなるだろうみたいな独特のイマジネーションの飛躍があるんですね。
現実でありながら微妙に何かがずれていて、奇妙な違和感が出ている世界。自分でもそういうものを書きたいと、どこかで思っているんでしょうね。
(c)A-1 Pictures/閃光のナイトレイド製作委員会
―― それは、メインに据えられたものを別の角度から見たらどう見えるか? みたいなことですか。
大西 そうですね。どっちかといったら私は「変化球ライター」なんだと思うんです。要するに直球な話とか熱い話は書けない。ストレートな話は本当に大変だと思います。
大西 基本的に、「シリーズ構成」には向いてないというのは、自分でもすごく思うんですよ。「シリーズ構成」というのは、全体の流れを決めて、オリジナル作品ならメインのストーリーを書いていく仕事であることが多いんですね。13本、26本と、一貫した話を通して書くとなると、それなりにきちっとした構造を考えていかなきゃならない。
私は一話分を書く場合でもけっこう行き当たりばったりで、ストーリーの頭から書かないで、おいしいところからつまみ食いで書いちゃうんです。好きなシーンからぽつぽつと書いていって、そこで無理やりつないでいくというようなやり方、プロットからどんどん変わっていってしまう。一話でもそんな調子だから、長いシリーズになるともう収拾つかなくなっちゃって(笑)・だから今後も、「各話ライター」で書かせていただければありがたいかなと思っています。
(c)A-1 Pictures/閃光のナイトレイド製作委員会
―― 「各話ライター」の方が、会話のやりとりや構成など、ご自身の色が出せると。
大西 そうですね。「DARKER THAN BLACK」もそうだったんですけど、シリーズ構成の菅正太郎さんが、「ゲートの謎」とか全体のメインの話を書いてくれて、私はその横からハードボイルドかぶれの私立探偵の話とか、風采のあがらぬ、憎まれ役の中年が若かったころの恋物語とか、そういうメインストーリーとは外れた話を書くのが好きだ、というか得意なのかな、そういうライターなんですね。
「ナイトレイド」でも、本当はメイン話よりも野村祐一さんが書かれた「カメラと包子と野良猫と」(第4話)みたいなサイドストーリの方が自分には合っているのかもしれません。……こういう性分って、シナリオライターとしては微妙でもあるんですよ(笑)。メインには行けないわけですから。
(A-1 Pictures)大松プロデューサー 「ナイトレイド」に関しては、アニメのメインストリームではないところを大西さんにお願いできたらと思ったんですね。アニメというのは、ダイレクトに感動に結びつく話に行くことが多いし、お客さんの需要も多いけれども、そうじゃないものも欲しいというところで。
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