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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 ― 第1回

アニメでも箱庭は作らない 「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」監督に聞く【前編】

2010年07月17日 12時00分更新

文● 渡辺由美子

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 「少女たちがいる軍隊」――。

 それがアニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台だ。戦争でそれまでの国はくずれさり、少女たちは焦土に生きている。だが、そこにはいわゆる終末的な悲壮感は描かれていない。代わりに描かれているのは、彼女たちが育んでいく友情や街の人々との交流といった、ほのぼのとした日常だ。

 「終末的な状況」と「ほのぼのした日常」。このアニメには、きわめて両極端に思えるこの2つの感情が同居している。そのふしぎな感情が生まれたのは一体なぜなのか。その謎を解きあかすべく監督の神戸守氏に話を聞いてみたところ、実感、そして継承という、2つのキーワードが見えてきた。インタビュー前編では「実感」の側面を伝えたい。

■ソ・ラ・ノ・ヲ・ト

 長く続いた戦争により、文明が後退し、人が住める土地も限られた世界。15歳の少女・カナタは、幼少時にトランペットを吹く女性兵士と出会ったことをきっかけに、喇叭手(ラッパ吹き)を志願。ヘルベチア共和国の西側国境沿いの田舎街・セーズの駐留部隊である第1121小隊に配属される――。



―― もうすぐ終わるかもしれない世界に生きるカナタたちは、軍人として砦に赴任しています。アニメの中でそのような状況を描こうとすると、もっと悲壮感がただよう物語になりそうですが、なぜほのぼのとした日常を描こうと思われたのでしょうか。

神戸 それは最初の話し合いで決まっていたんですね。深夜枠なので、見終わった後は穏やかに眠れるような、ほのぼのとしたテイストにしようということは。

神戸守監督

清水暁(制作会社・A-1 Pictures) 「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」が放映される「アニメノチカラ」というのは深夜1時半からスタートする枠で、視聴者は大人の方が多いんですね。仕事から帰った人たちが、夜中に家で穏やかに見られる作品にしたいというところは、こちらのオーダーとしてあったんです。

神戸 オリジナル作品をやりましょうという話が来たときに、僕が最初に出した案は、シルクロードを舞台にした男女の「輪廻転生もの」だったんです。でも今、シルクロードではちょっとお客さんの引きとして弱いということで、そのままでは通らなかったんですよ。

 でも、結論から言えば、僕がやりたかった要素は「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」でほぼ入れることができたんじゃないかなと思います。

 今、深夜枠を見るお客さんに好まれているのは、「女の子たちが日常を楽しく過ごしているほのぼのとした世界」(小松慎太郎氏/アニプレックス 宣伝)という。こうした視聴者のニーズを意識して、ほのぼのと楽しく観られる作品にする一方で、「考えようと思ったらどこまでも考えられるような、奥行きのある作品にする」という方針が定まっていった。

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