フルハイビジョン映像を
ビットレート1.6MbpsのH.264に変換
GV-MVP/XZが搭載するハードウェアトランスコーダーは、富士通が2009年5月に発表した「MB86H58」である。フルHD解像度(1920×1080ドット)の映像および音声データを、MPEG-2方式とH.264方式で双方向変換できる1チップトランスコーダーだ。GV-MVP/XZでの通常録画時は、デジタル放送のTS(MPEG-2 HD/SD)方式から録画データとなるTS(H.264 HD/SD)方式への変換を受け持っている。
このチップのおかげで、GV-MVP/XZの最大の特徴でもある最大15倍録画が可能になった。BS/110度CSデジタルのフルハイビジョン映像(ビットレート約24Mbps)を、解像度はそのままでMPEG4-AVC/H.264形式(ビットレート約1.6Mbps)に変換するHR15モードが使えるのだ。
なお本製品の付属ソフトは、制御ソフトとなる「mAgicマネージャ Digital」と、視聴・録画用の「mAgicTV Digital」から構成される。インストール直後はmAgicマネージャ Digitalの設定用アイコンが表示され、そこから起動時のモード(通常/Netbook/Netbook SD)設定や、チューナーのチャンネル設定を行なう。この段階で、USBで接続しているパソコンとGV-MVP/XZがひも付けされる。ちなみにこれらソフトは同社のテレビチューナーで共通のものとなっているため、GV-MVP/XZでは一部使用できないオプションがある。
また、同梱された「DiXiM Media Server 3 for mAgicTV」を用いて、録画番組のLAN配信も可能だ。配信された映像は、同じく同梱の「DigiOn DiXiM Digital TV」(DTCP-IP対応プレーヤー)をインストールしたほかのパソコンや、DLNA(DTCP-IP)対応のデジタルテレビなどで視聴できる。
指定したキーワードなどに応じて自動的に録画する「おまかせ録画」機能もあり、これ1台で家庭内LAN環境を通じたテレビネットワークが構築できるわけだ。HR15モードで録画されたデータであれば、ストリーミング動画並みの約1.6Mbpsという低ビットレートになるので、LAN環境に大きな負荷をかけないのもいい。十分なスペックを持つハイエンドパソコンであれば、複数台のGV-MVP/XZを接続して同時多チャンネル録画も可能だという。
ネットブックでフルセグ地デジの視聴・録画を可能に
本機が内蔵するハードウェアトランスコーダーの「MB86H58」には、TS(MPEG-2 HD/SD)からTS/PS(MPEG-2 SD)に変換して、USB経由で出力する機能もある。これを活かしたのが、GV-MVP/XZの「Netbook/Netbook SDモード」だ。ネットブックなど低スペックノートパソコンへの負荷を、大幅に減らすことができるという。
Netbookモードでの制限は、番組情報や番組表の取得、予約録画の番組追従、録画の自動終了、データ/字幕放送の表示のすべてが不可になる。またNetbook SDモードでは、視聴・録画ともSD画質に固定される。最もCPU負荷を減らせるのは、Netbook/Netbook SDモードの併用時だ。
今回のテストでは、先に紹介した対応機種一覧には当てはまらない、より低スペックのCPU(Athlon Neo MV-40、1.60GHz)を搭載する「ThinkPad X100e」にて、Netbook/Netbook SD併用モードを試してみた。なお、同パソコンでGV-MVP/XZを通常モードで起動すると、ソフト自体は動作するものの映像は途切れ途切れになり、ほかの操作が一切行なえない。Netbookモード時でもCPU負荷は100%に達し、高解像度での視聴がギリギリというレベルだ。
それがNetbook/Netbook SD併用モードにすると、mAgicTV Digitalの起動やGV-MVP/XZの初期化に少々時間を要するものの、テレビ視聴中のCPU負荷はおよそ40%前後で済む。そのまま録画に移行しても、50%前後のCPU負荷で推移しており、録画データの再生時もCPU負荷は30~40%に抑えられていた。画質もSDモード(720×480ドット)とはいえ、一般的にDVD画質相当と称されるだけあって、十分実用に耐えるものだ。
対応機種外のシングルスレッドCPU搭載ノートでこうなのだから、最近のマルチスレッドCPUを載せたネットブックであれば、快適なテレビ視聴・録画が可能であろう。蛇足になるが、視聴・再生ソフトのmAgicTV Digital が、ThinkPad X100eの有するH.264再生支援機能に対応してくれていれば言うことはなかったのだが(X100eは通常のフルHD AVCHD動画であれば、Windows 7のWindows Media Playerを用いてCPU負荷10%程度で再生できる)。
★
本来想定される使用シーンとは違うかもしれないが、USBバスパワーで動いてサイズもコンパクトなGV-MVP/XZなら、ノートパソコンといっしょに持ち運んでも使える利点がある。ネットブック対応を特徴とするのも、そういった使い方に役立つ。一般的なテレビパソコン的に使うだけでなく、ノートと一緒に持ち出して、出先で録画したハイビジョン番組を鑑賞するのも、家電のレコーダーではできない、本機ならではの楽しみ方と言えよう。
GV-MVP/XZ の主な仕様 | |
---|---|
受信チャンネル | 地上デジタル 000~999、BSデジタル 001~999、110度CSデジタル 000~999 |
映像記録方式 | MPEG-2、MPEG4-AVC/H.264 |
接続インターフェース | USB 2.0 |
サイズ | 幅98×奥行き92×高さ26mm |
質量 | 約110g |
価格 | 1万5700円 |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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