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四本淑三の「テレビを捨てよ、動画サイトを観よう」 第7回

なぜ我々は「電子工作!」に燃えてしまうのか?

2009年06月14日 12時00分更新

文● 四本淑三

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アルドゥイーノは電子工作野郎にとっての「初音ミク」かもしれない

 ブレッドボードは、電子部品やリード線を差込むことで様々な回路が作れる、マトリクス状に穴が空いたプラスチックの板だ。ざっくり言えば往年の学研「電子ブロック*1」のようなもの。半田ごてを使わなくていいので、電子工作のハードルがぐっと下がった。

 Arduinoはオープンハードウェアの入出力ボードと、オープンソースの開発環境で構成されたマイクロコンピューター。コードの書き換えはUSBでパソコンとつなぐだけだし、言語はProcessingベースだ。誰にでもすぐ使えるとは言わないが、マイコンとして考えると格段に敷居は下がった。友人が翻訳した入門本*2も理工系の書籍としては例外的に売れているらしい。

 「半田ごてフリー」の環境は整った。問題はそれで何をすべきかが分からなかったことだ。が、ある日を境に私の身の回りで突如Arduinoが流行り始める。「ボクもamazonでポチった*3」というようなメッセージがTwitterに流れるようになる。彼らは決して普段から電子工作を趣味にしている人たちではない。

 それは「Electribe MX」の使い手として知られるDenkitribe氏のデモがきっかけだった。

 Arduinoを鳴らす「Auduino」というグラニュラー合成*4ソフトを使った演奏だ。可変抵抗を回して音程が段階的に変化するのは、ソフト側でスケールを与えられるから。この辺はKAOSSILATOR的だし、その音程がバックトラックと整合しているので音楽的にも面白い。

 Denkitribe氏はプログラマーとしての引き出しも豊富なので、Arduinoは絶好のツールなのだろう。彼は映像的に訴求力のあるインターフェイスを考えているようで、こんなことも試している。最後にリードを全部抜いてシーケンスを止めるところが最高だ。

 ニコニコ動画とボーカロイドのように、コンテンツを共有するプラットフォームを指してUGM(User Generated Media)やUGC(User Generated Contents)という略語をよく聞くが、最近ではUGD(User Generated Device)という言葉も聞くようになってきた。

 それは半田ごてを持てなくても電子工作が可能になり、敷居の低いマイコンが登場したからに他ならない!

 ならばオレも! と盛り上がり切って、つい先ほどArduinoをポチってしまったのだが、Denkitribe氏の動画を良く見ると、可変抵抗の配線には半田付けが必要のようだ。ううむ。このままでは「あれさえあればlivetuneみたいな曲が作れるんだ!」と、勢いだけで初音ミクを買ってしまった人のようになりそうで心配です。


*1 電子部品を内包したブロックを組み替えることで「ラジオ」や「うそ発見器」が作れた。現在でも実習用として電子ブロック機器製造株式会社が製造販売中。http://www.denshiblock.co.jp/ 同様の製品としてドイツのBraun Lectron(レクトロン)も有名だった。

*2「Arduinoをはじめよう」Massimo Banzi(著) 船田 巧(翻訳)

*3 ブレッドボード付きの「Arduinoをはじめようキット」がスイッチサイエンスから売られている。

*4 Granular Synthesis。パルス状の短い信号を並べて音として合成する手法。DJ用のルーパーでサンプリング周期を短くした時に得られる音の変化がそれに近い。

四本 淑三(よつもと としみ)

1963年大分県生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科講師。高校時代に音楽雑誌へ投稿を始めたのを契機に各種のコンテンツ制作や執筆作業に関わる。最近流行っているのがUSTremを使った遠隔セッション。ある晩、ネットで有名なミュージシャンが一度に集まってしまい、ものすごい展開に。これを身内だけで楽しむのはもったいないなあ……ということでニコニコ生放送の番組「高円寺ストリーミング ガジェ音」を企画しました。ガジェット通信チャンネルで、7月3日(金)午後8:30ぐらいから、大体1時間半に渡って放送される予定。よろしくー!

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