XPが動くと言っても、何でもできるわけではない
XPM上ではXPのアプリケーションを動かせるが、何でも動くわけではない。
まず、XP専用の周辺機器の多くは動かない。ハードウェア仮想化という手法を使っているため、周辺機器のデバイスドライバーをXPMでは動かせないためだ。つまり、XPでしか動かないプリンターやテレビチューナーカードなどは、XPMでも動作しない。
さらに、グラフィックスも大きな制限がある。XPMでは仮想化された「S3 Trio32/64」をGPUとして使用する。そのため、Direct 3Dを使用しているゲームがXPMで動くわけではない。
XPMはUSBをサポートしている。ホストOSのUSB端子に接続されたUSBメモリーや光学ドライブ、デジタルカメラ、携帯電話やPDAなどのモバイルデバイス、デジタルカメラ/ビデオカメラ、無線LAN、プリンターなどが使用できる(すべてのUSB機器が動くことを保証するわけではない)。
このように制限の多いXPMだが、なぜWindows 7に導入されたかと言えば、企業ユーザーにXPからWindows 7に移行してもらうためだ。企業ではXPでしか動作しないアプリケーションも多数使われており、Vistaへ移行が進まなかった。そうした企業ユーザーにWindows 7へと移行してもらうために、XPのアプリケーションが動作する環境を用意したわけだ。
企業ユーザー向きといっても、個人が利用できないわけではない。例えば、Vistaに対応しなかった名刺管理ソフトや年賀状ソフトなどは、個人でもXPMが使えれば昔のデータをそのまま使える。
XPMの便利な点は?
XPMを使っていて便利だと感じたのが、仮想環境を感じさせない使い勝手だ。XPMでは仮想マシンソフトのウインドウの中だけではなく、アプリケーションのウインドウだけをXPMで動かすこともできる。アプリケーションはWindows 7上で動く普通のアプリケーションのように見え、特別な仮想マシンで動いているようには見えない。
アプリケーションの背後では、Virtual PCによって仮想マシン上でXPが動いているが、デスクトップに見えるのはアプリケーションのウインドウだけ。これなら、Windows 7のデスクトップ上にXPの仮想デスクトップが表示されるという、仮想マシン特有のややこしさはないので、ユーザーにとっては使いやすい。
マイクロソフトでは、ゲストOSをXPに限らない「Windows Virtual PC」を開発している。これは、既存のVirtual PCの後継製品となる。機能としてはXPMとほぼ同じで、XPMからXPを取り外したものと考えればいい。
ただし、こちらにはXPが付属していない。ユーザー自身がXPの正規ライセンス(とインストールDVDなど)を持っていないと、XPを動かすことはできない。その代わり、XP以外のOSも動かせる。例えばVistaやLinuxなど、ゲストOSとしてサポートされているOSなら、何でも動作させられる。
Virtual PCは、Windows 7のHome Basic以上のエディションで動作する。提供形態に関してはまだはっきりしていないが、既存のVirtual PCが無料で提供されていたので、Windows Virtual PCも無償提供になるだろう。
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便利そうにみえるXPMだが、あまり期待をしても肩透かしを食う。実際テストしてみると、メインメモリーを大きくすれば、ある程度は動作するのだが、もっさりした動きなのは変わらない。マウスを早く動かしたりクリックすると、画面の変化がワンテンポ遅れてくる。また、ゲームなどはまったく動かないと思った方がいい。
XPMはVistaに移行しなかったユーザーの一時的な救済策だ。長期間XPMでアプリケーションを動かし続けるのではなく、Windows 7対応アプリケーションに移行するまでのつなぎと考えるべきだろう。
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