バッテリー駆動時間や内蔵ソフトで
「dynabook」らしさを演出するが……
では、バッテリー駆動時間は実際のところどのくらいだろう? いつもと同じく、「BBench」でテストを行なった。今回は6セルバッテリーの準備が間に合わなかったため、標準添付の3セルバッテリーのみの結果となっている。
最も消費電力を抑えた状態で2時間51分というのは、3セルバッテリー(カタログ上は4時間動作)の製品としては優秀な値である。バックライト輝度を最大にし、省電力機能を働かせない場合でも2時間40分動作しているので、このあたりも魅力的である。大容量バッテリーならば、少なく見積もっても倍近い時間は使えるだろうと期待でき、1.3kgの重量で「一日使える」パソコンが手に入る、と考えてよさそうだ。
放熱性能については、バッテリー駆動時間ほど優秀ではなさそうだ。キーボード、底面ともにそこそこ発熱しており、膝の上などで使うと不快感を感じる。本体左側に排気口があり、この周囲がもっとも発熱する。とはいえ、これは多くのAtom採用機に見られる特徴なので、UX特有の現象ではない。Atom搭載機は常にフルパワーに近い速度で動作しているのに加えて、コストの安いプラスチックボディーを採用したがゆえの放熱性の悪さが原因だろう。
各部の温度 放射温度計による測定、外気温は24℃。高負荷時のデータはH.264の動画再生時に計測 | ||||
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パームレスト | 底面の最大発熱部 | 底面 | キーボード | |
アイドル時 | 約30度 | 約35度 | 約31度 | 約32度 |
フルパワー時 | 約32度 | 約36度 | 約33度 | 約33度 |
中身の面でNB100と最も大きな違いは、付属ソフトにある。NB100では、最低限必要なドライバー類をのぞき、東芝PCらしいソフトはほとんど入っていなかったが、UXにはほかのdynabookと同様のユーティリティーやソフトが組み込まれた。
中でも、旺文社の「英和中辞典」「国語辞典」など4つの辞書を搭載した電子辞書ソフト「デ辞蔵PC」は、Netbookのニーズを考えて、新規に搭載されたものである。また、先日発表された「Microsoft Office Personal 2007 2年間ライセンス版」搭載モデルもある(Officeの有無での価格差は1万円程度)。
NB100について取材した際に、東芝の担当者は「この製品はdynabookではない」と何度も述べた。だが、デザインをのぞくコンポーネント類だけを比較すると、NB100とUXを隔てるものは特にない。ということは、デザインからドライバー類のチューニングまで、細かな積み重ねによる「洗練」こそが、dynabookブランドを名乗るための条件、ということなのだろう。確かにUXは、NB100とは違う「こだわり」を感じるし、所有感も高い。国内で企画されたNetbookの中でも、とりわけ「こだわり」の見られる製品といえる。
その一方で、ソフト的な洗練はまだまだ、という印象も受ける。例えば、ドライバー回りのユーティリティソフトがそれだ。dynabook UXはほかの東芝ノートと違い、ディスプレーの縦の解像度が600ドットと低い。そのため、設定画面で必要なボタンが画面外に隠れてしまい、表示ができないことがある。今回のテスト中も、省電力設定を適切に設定できず、しばらく悩んだのだが、理由は「デフォルト設定変更」用のボタンが画面から隠れており、設定できなかったためだ。
このようなことはUXのみならず、他社のNetbookでも少なくない。だからこそ私は「初心者にはNetbookを勧めない」し、縦576ドットの機種を好まない。東芝が「dynabookのクオリティー」を強調したいのであれば、こうした問題を起こすユーティリティー側の修正を含めて、なんらかの配慮をしておいてほしかったと思う。
- オススメする人
- ・デザインの良いNetbookを求めている人
- ・バッテリー持続時間の長いNetbookを求めている人
dynabook UX UX/23、UX/24 | |
---|---|
CPU | Atom N280(1.66GHz) |
メモリー | 1GB |
グラフィックス | Intel 945GSE Expressチップセット内蔵 |
ディスプレー | 10型ワイド 1024×600ドット |
HDD | 160GB |
光学ドライブ | 搭載せず |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g |
カードスロット | ブリッジメディアスロット(SD/SDHCメモリーカード、MMC) |
インターフェース | USB 2.0×3、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど |
サイズ | 幅263×奥行き193×高さ25.4~32.4mm |
質量 | 約1.13kg |
バッテリー駆動時間 | 約4.0時間 |
OS | Windows XP Home Edition SP3 |
予想実売価格 | 6万円前後(UX/23)、7万円前後(UX/24) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。
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