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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第22回

「dynabook」の名を持つ東芝の新Netbookは買いか?

2009年04月22日 16時00分更新

文● 西田 宗千佳

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バッテリー駆動時間や内蔵ソフトで
「dynabook」らしさを演出するが……

 では、バッテリー駆動時間は実際のところどのくらいだろう? いつもと同じく、「BBench」でテストを行なった。今回は6セルバッテリーの準備が間に合わなかったため、標準添付の3セルバッテリーのみの結果となっている。

バッテリー駆動時間の計測結果

バッテリー駆動時間の計測結果。「BBench」にて計測。設定1:「フルパワー」設定、バックライト輝度最高。設定2:「ロングライフ」時設定、バックライト輝度最低

 最も消費電力を抑えた状態で2時間51分というのは、3セルバッテリー(カタログ上は4時間動作)の製品としては優秀な値である。バックライト輝度を最大にし、省電力機能を働かせない場合でも2時間40分動作しているので、このあたりも魅力的である。大容量バッテリーならば、少なく見積もっても倍近い時間は使えるだろうと期待でき、1.3kgの重量で「一日使える」パソコンが手に入る、と考えてよさそうだ。

 放熱性能については、バッテリー駆動時間ほど優秀ではなさそうだ。キーボード、底面ともにそこそこ発熱しており、膝の上などで使うと不快感を感じる。本体左側に排気口があり、この周囲がもっとも発熱する。とはいえ、これは多くのAtom採用機に見られる特徴なので、UX特有の現象ではない。Atom搭載機は常にフルパワーに近い速度で動作しているのに加えて、コストの安いプラスチックボディーを採用したがゆえの放熱性の悪さが原因だろう。

各部の温度 放射温度計による測定、外気温は24℃。高負荷時のデータはH.264の動画再生時に計測
パームレスト 底面の最大発熱部 底面 キーボード
アイドル時 約30度 約35度 約31度 約32度
フルパワー時 約32度 約36度 約33度 約33度

 中身の面でNB100と最も大きな違いは、付属ソフトにある。NB100では、最低限必要なドライバー類をのぞき、東芝PCらしいソフトはほとんど入っていなかったが、UXにはほかのdynabookと同様のユーティリティーやソフトが組み込まれた。

 中でも、旺文社の「英和中辞典」「国語辞典」など4つの辞書を搭載した電子辞書ソフト「デ辞蔵PC」は、Netbookのニーズを考えて、新規に搭載されたものである。また、先日発表された「Microsoft Office Personal 2007 2年間ライセンス版」搭載モデルもある(Officeの有無での価格差は1万円程度)。

辞書ソフト「デ辞蔵PC」

辞書ソフト「デ辞蔵PC」。動作が軽く、内蔵辞書を串刺し検索できるのが特徴だ

 NB100について取材した際に、東芝の担当者は「この製品はdynabookではない」と何度も述べた。だが、デザインをのぞくコンポーネント類だけを比較すると、NB100とUXを隔てるものは特にない。ということは、デザインからドライバー類のチューニングまで、細かな積み重ねによる「洗練」こそが、dynabookブランドを名乗るための条件、ということなのだろう。確かにUXは、NB100とは違う「こだわり」を感じるし、所有感も高い。国内で企画されたNetbookの中でも、とりわけ「こだわり」の見られる製品といえる。

 その一方で、ソフト的な洗練はまだまだ、という印象も受ける。例えば、ドライバー回りのユーティリティソフトがそれだ。dynabook UXはほかの東芝ノートと違い、ディスプレーの縦の解像度が600ドットと低い。そのため、設定画面で必要なボタンが画面外に隠れてしまい、表示ができないことがある。今回のテスト中も、省電力設定を適切に設定できず、しばらく悩んだのだが、理由は「デフォルト設定変更」用のボタンが画面から隠れており、設定できなかったためだ。

画面は、ネットワーク関連の設定ユーティリティー「Configfree」。一見なんの問題もないように思えるが(左)、実は一番下が隠れてしまっており(右はウインドウを上に移動した状態)、重要ないくつかの設定ができない。解像度が低いNetbookに、既存のパソコン用ユーティリティーを搭載したが故の問題だ

 このようなことはUXのみならず、他社のNetbookでも少なくない。だからこそ私は「初心者にはNetbookを勧めない」し、縦576ドットの機種を好まない。東芝が「dynabookのクオリティー」を強調したいのであれば、こうした問題を起こすユーティリティー側の修正を含めて、なんらかの配慮をしておいてほしかったと思う。

オススメする人
・デザインの良いNetbookを求めている人
・バッテリー持続時間の長いNetbookを求めている人
dynabook UX UX/23、UX/24
CPU Atom N280(1.66GHz)
メモリー 1GB
グラフィックス Intel 945GSE Expressチップセット内蔵
ディスプレー 10型ワイド 1024×600ドット
HDD 160GB
光学ドライブ 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11b/g
カードスロット ブリッジメディアスロット(SD/SDHCメモリーカード、MMC)
インターフェース USB 2.0×3、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど
サイズ 幅263×奥行き193×高さ25.4~32.4mm
質量 約1.13kg
バッテリー駆動時間 約4.0時間
OS Windows XP Home Edition SP3
予想実売価格 6万円前後(UX/23)、7万円前後(UX/24)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。


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