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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第68回

コンテンツ元年をうたうソフトバンクの取り組み

2009年04月11日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ソフトバンクの思惑、
そしてユーザーやプロバイダーはどうする?

 今回の施策から読み取れるソフトバンクの思惑は明確だ。他社よりも低く推移している1人あたりの月額データ使用料(データARPU)を高めていこうという考えである。

 2008年10月~12月期で比較すると、ドコモが2390円、auは2220円に対して、ソフトバンクは1790円と差がついている。ソフトバンクにとって、データARPUの向上は大きな課題になっているのだ。

 ソフトバンクとしては、ここまで紹介したタダシリーズ、コンテンツ得パックに加えて、さらにモバイルウィジェットをテコにして、mixiやモバゲータウン、ニコニコ動画といったPCから利用するインターネットで人気のあるサービスをモバイル上で展開する取り組みを始めている。PCのネットサービスを持ち出しやすくすることでパケットを使ってケータイを楽しんでもらおうと躍起だ。

 ただし、これらの取り組みがまだ十分に連携していない点がもったいないと感じる。モバイルウィジェットからコンテンツ得パックのサービスが利用できる動線を作ったり、メール以外のプッシュのやり方もあるはずである。既存のサービスと新しいパッケージをうまく融合させる取り組みによって、ユーザーが快適にケータイコンテンツを楽しめる環境作りに期待したいところだ。

 またスマートフォンに関して、特にiPhoneユーザーはパケット定額フルの上限まで使い切るユーザーが多く、データARPU向上に貢献しているようだ。ウェブやメールを使いたいユーザーが進んで選んでいる点もあるが、App Storeで配信される魅力的なアプリケーション群のダウンロードや、アプリ利用で、自然とパケット通信を利用してしまう。iPhoneのようにパケット通信を使う目的性が強い端末を打ち出すことも、データARPU向上に役立つかもしれない。

 あともう1点、コンテンツプロバイダーは月額課金という既存のビジネスモデルから、そろそろ違う方向性を考え始める必要があるかもしれない。コンテンツ得パックもユーザー1人あたりの利益が下がると見るのではなく、「ユーザーが集まる」点にフォーカスして自社ビジネスを組み立てる視点を持つべきと感じる。

 たとえばウェザーニューズは、会員のユーザーから集める気象情報を分析してフィードバックすることで、自社の気象情報の精度や情報のバラエティさを向上させる好循環を作り出している。このような流れができてくれば、集客の場としてコンテンツ得パックを活用しながら、自社サービスの価値を高めていけるのではないだろうか。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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