温度と消費電力
製造プロセスが45nm SOIとなったPhenom II X4だが、消費電力はどのくらい改善したのだろうか。というわけで、温度と消費電力を見てみよう。温度は、AMD OverDriveユーティリティにて、消費電力はシステム全体の電力を測定するワットチェッカーを使って計測をした。アイドル時はOS起動後、30分放置したときのもので、省電力機能(Cool'nQuiet)を有効にした状態と、無効にした状態にてそれぞれ計測。高負荷時はPrime95を実行し、CPU稼働率を100%にした状態で10分放置した後の状態を計測している。
クロックで勝るPhenom II X4 940 BEだが、製造プロセス45nm SOIの効果は抜群で、温度、消費電力ともに圧倒的に低い数字を残している。ただ、部屋の気温が15℃なのに対し、AMD OverDriveユーティリティが返す値が5℃というのは、どう考えても低すぎなため正確な値ではない。が、消費電力を見る限り、Pheonm II X4 940 BEの省電力ぶりはお分かり頂けると思う。
順当な仕上がりを見せるPhenom II X4 940 BE
Socket AM2+最後のアップグレードパス
Phenom X4 9950 BEに対してクロック向上以上のパフォーマンスを叩き出すPhenom II X4 940 BEの予想実売価格は2万9800円前後。この価格帯のライバルには、IntelのCore 2 Quad Q9550やQ9400、Core 2 Duo E8600など強豪がひしめいている。なかでも最大のライバルはCore i7-920だろう。これら、IntelのCoreシリーズに対してPhenom II X4 940 BEが持つ最大のアドバンテージは、トータルなコストパフォーマンスだ。しかし逆を言えば、それ以外に訴求する要素がなく、新規で購入する積極的な理由になりにくい。
もちろん、この記事を読むような読者であれば、ベンチマークの結果からある程度のパフォーマンス予測をすることは容易であり、筆者や編集部の意図とは別に独自の見解を導き出せるものと思われるが、そうではない一般のユーザーに「Phenom IIがオススメ!」と言ったところで「Phenomって何?」と返されるのがオチである。そう、圧倒的に知名度が足りないのだ。そしてPhenom IIにブランドを浸透させるだけの力は、まだ無いように思える。そんなわけで気の早い話だが、DDR3に対応するSocket AM3版のPhenom IIに、Coreシリーズを圧倒する“何か”を期待したい。
ネガティブなことを書いたが、現行のSocket AM2+マザーボードに組み合わせるCPUとして、Phenom IIは間違いなくオススメだ。高いクロックにも関わらず、発熱や消費電力が低く、Phenomの弱点だった部分をうまくカバーしている。Athlon 64 X2世代を使っているなら最後のアップグレードパスとして、Phenom II X4 940 BEを検討してみてはいかがだろうか。
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