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「show and tell」の文化

2008年06月01日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

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ショウ・アンド・テルで育む パブリックな表現マインド


01

 ブログは米国生まれ。自己表現する文化が生み出した表現媒体だ。ウェブ(web)上の言葉(log)だからウェブログ(weblog)、略してブログ(blog)である。

 自己表現したい人々にとって、ブログは最適の媒体だ。自分の表現を一瞬にして世界中に公開することができる。実際に見回すと、アリスだのボブだの、実名入りのブログが多い。「自分の」表現なのだから、名乗るのは当たり前である。

 米国のプリスクールや幼稚園などでよく行われる「show and tell」。お気に入りの本やおもちゃなどを持参し、それに関して友人たちの前で大いに語る。人前で何かについて語る訓練が、ほんの3歳くらいから始まるのだ。どこを見てしゃべるか、どういう順番で何を語ると伝わりやすいか、身振りをどのように使うと効果的か、どうやったら聴衆の興味を引くことができるか──。

 人前で語ることについて自然と考えることになる。同世代の友だち同士で行うのだから、お互いに刺激になるし、失敗も怖くない。友だちのカッコいい話し方を自分も取り入れてみる。語ることによって友だちや先生から賞賛を受けるから、人前で語る気持ちよさを知る。こうして、複数の人を前にしてパブリックに表現するのが楽しい、と感じる経験が積み重ねられるのである。

 また、これによって「いい聴衆」になる訓練も繰り返される。目の前で語る友人に注目し、勇気づけ、喝采し、賞賛する。的を射た質問を投げかけることによって、特徴をさらに引き出す。話を面白くするために、お互いに貢献するのだ。こうして表現する者とそれを受け止める人々との間で「表現の場」が形成されていく。この表現の場こそ、社会であり、パブリックであり、民主主義の基礎となる。表現の場を協力しながら作り上げていくマインドが、教育のプロセスで育まれていくのだ。

 このショウ・アンド・テル、日本ではどうだろう。人前で語ることに慣れていない生徒や学生は、何らかの発表の機会があってもなかなか自ら前に立とうとしない。照れ隠しに笑ってみたりして、「笑・アンド・照れ」になってしまう。また聞く側からもいい質問が出なかったり、ときに冷やかしを浴びせたりして、うまく表現の場が形成されない。しかし、教員が適切に導きながら回数を重ねれば、次第に建設的な空間が形成されていく。誰でも経験を積めば徐々に堂々と語れるようになるのだ。


(次ページに続く)

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