「充電してくれ」と求めてくる
815T PBは、ドラマの世界観を感じさせる待ち受けアプリ「バディトーク」を用意しており、これを起動しておくと、ケータイが文字で話しかけてきたり、電池が減ったときに「充電してくれ」と要求してくる。ユーザーが「はい」「いいえ」「スルー」の項目から選んで対話していくことで、持ち主の趣向や行動パターンを「学習」して会話内容が変わるというのもロボットらしい。
ドラマそのものが、人間とケータイの新しい関係についてのイメージを明確に見せてくれる点も含めて、おもちゃと思わずに、真剣にこのケータイと向き合う事によって生まれるケータイの未来像は、間違いなくありそうだ。
ケータイの形態変化は、今後は端末の形ではなく、関係性の形態の変化に、ヒントが隠されていると強く感じた。これまで、端末をぱかぱかと開閉するだけの「無意識な動作への快感」がケータイにはあった。しかしこれから無意識の意味が変わるのではないか。ユーザーが操作するのではなく、日常生活の何気ない行動がケータイへの「無意識な入力」となり、その結果、ケータイを介して自分の生活を便利にしてくれる。
フォンブレイバーのバディトークはどちらかといえばお遊びのような機能ではあるが、端末との対話や行動から「察してくれる」ような変化が加わると、ケータイが空気のような存在に変化していくのかもしれない。マナーモードにしたり、通話する場所を気にしたり、今は人間がケータイに気をつかっているが、この関係性が逆転する日も近いと思うのだ。
それにしても電池フタのこんな使い方があったとは、いまだに感心しきりである。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
*次回は5月29日掲載予定
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