DRMには技術的な寿命がある
── 文化庁のビジョンでは、いつ頃、補償金はなくなる予定ですか?
津田 いずれ「20XX年」にはそうなるでしょう、という見方です。
── 私的複製をDRMベースでコントロールすることについて、津田さんはどう考えますか?
津田 委員会の中でも発言しましたが、「DRM技術を使って、ユーザー/権利者の契約ですべてを解決できれば、補償金がいらなくなる」のかというと、「現実的にはちょっと難しいんじゃないか」という認識です。
台湾製の「フリーオ」というパソコン向けキャプチャー機器が登場して地上デジタル放送のDRMが破られてしまいました。この例を見て分かるように、DRMは技術的な寿命が存在する。どうしても「整備する側」と「それを破る側」のいたちごっこになってしまうのです。
また、音楽や映像のコンテンツは、今後、インターネット上だけで流通するかというとそうではなく、依然DRMがかかっていないパッケージも存在し続ける。そういう意味で、DRMと契約で解決できる問題なのかは疑問です。
もう少しローレベルで考えたい
── 津田さんはどういう立場を取っていますか?
津田 DRMと契約ベースで解決する世界が現実的なインフラとして見えてきたらそのとき初めて議論すればいいのではと感じます。
文化庁ビジョンは悪くはないけど、やはり実現性というところで疑問が残る。そもそもDRMで解決する世界がありうるのかという、そのあたりのレベルから考える必要があるんじゃないでしょうか。
── 企業がそうした大規模なDRMを作るのは難しそうですが、 国が作るという構想はあるんでしょうか?
津田 今後、方針が決まれば、業界団体などの大きなところで決まっていく可能性はありますが、日本独自の標準DRMが決まってしまったが故に、世界市場から取り残されるなんてことも十分考えられますよね。海外で普及しなければATRAC3やMagic Gateの二の轍を踏むことになってしまうわけですから。
僕は、既存の市場やユーザビリティーを損なわない形で、新しいDRMを展開していくよりも「市場で定着したDRMにビジネスモデルを合わせて行く」方が現実的なのではないかと思います。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆す るライター/ITジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。音楽配信関連の話題 を扱うウェブサイト“音楽配信メモ”の管理人としても知られる。この8月に小寺信良氏との共著 で『CONTENT'S FUTURE』を上梓。
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