インターネット電子図書館の「青空文庫」は26日、著作権切れとなっている約6500点の文学作品をDVD-ROMに収めて、全国約8000の図書館に無料で配布すると発表した。DVDに含まれる作家/翻訳家は、夏目漱石、太宰治、芥川龍之介、カフカ、ドフトエフスキーなど407名だ。
青空文庫がテキストデータ化した作品は、同団体のウェブページでも無料配布されているが、今後はインターネットに加えて、図書館でもテキストデータを入手できるようになる。さらにこのテキストは、複製や再配布が許可されているため、図書館がDVDをコピーして利用者に配布することも可能だ。
青空文庫の10周年に合わせて発表されたこの一大事業を、デジタルコンテンツの専門家はどう見るだろうか? ITジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
【解説】青空文庫
青空文庫は、富田倫生(とみたみちお)氏を中心に、ボランティアベースで運営されているインターネット電子図書館。作者/翻訳者の死後50年が経過して著作権が消滅した作品や、著作者自身が公開を許可した作品を、テキストデータ化して、インターネットを通じて配布している。ちなみに、今回のDVDの作成/配布には約300万円かかり、その費用は青空文庫のトップページにおける広告収入から捻出するという(プレスリリース)。
「とても素晴らしい活動だと思う」
── 津田さんはこのニュースを聞いて、率直にどういう感想を持たれましたか?
津田 手放しで褒めたい、本当にエポックメイキングな出来事だと思います。
約6500点という膨大な数の作品を、場所を取らないDVDで図書館という場所に保存管理しておけるようになる。図書館は行政サービスとしての一面もありますが、それ以上に「文化をアーカイブしておく場所」としての側面を持つわけです。今回の青空文庫の行動は「文化のアーカイブ」という点で、非常に大きな意味を持っています。
寄贈されたDVDを生かすも殺すも、図書館次第になるんじゃないですかね。現状でITスキルを持っている司書や利用者がいなくて、なかなか活用されることがなくても、デジタルデータとして10年後、20年後に作品達が残っているというのが重要だと思います。
── 一見、文学作品を収めるメディアが、紙からDVDに置き換わっただけのようにも感じますが、青空文庫ならではのメリットはありますか?
津田 青空文庫の一番のウリは、テキストがデジタル化されているということです。さらにDVDに収録されている作品は、著作権が切れている作家が書いたもので、青空文庫も複製、再配布などを許可しています。
つまり、図書館はこのDVDを元に、司書のアイデア次第でさまざまなサービスが提供できるようになるんです。
(次ページに続く)
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