「お手入れ」を楽しめる、愛らしいケータイ
MEDIA SKINをデザインしたのは吉岡徳仁さん。製品名にも現れているように、「第二の皮膚」をコンセプトとして作られている。ケータイは僕らの生活に最も近いメディアである。そんな人に接近しているモノの手触りが有機的であるべき、というのは、多くの椅子のデザインを手がけている吉岡さんならではの感性だ。
ところで僕はMEDIA SKINを春先から使っていて、実はこの端末は夏にはちょっと不向きだった、という経験をした。
夏場のMEDIA SKINは、よく汚れるのである。表面の柔らかさを作り出す粒子による凹凸が、汗ばむ季節になると、汚れを多く囲い込んでしまう。オレンジの端末をポケットに入れて、おろしたてのジーンズで出かけようものなら、インディゴが移って真っ青になってしまう。これにはびっくりした。もちろんお手入れしてちゃんとオレンジに戻ったんだけれども。
以前から僕は、ケータイのミライ像は人に気を遣ってくれる黒子のような存在になると考えている。現在のケータイは逆で、むしろユーザーがケータイに気をつかっているのだ。公共空間に行けばマナーモードに設定するし、汚れればキレイなるように磨く。
しかしこのMEDIA SKINのお手入れは、ペットにブラシをかけるように、面倒な作業と言うよりはむしろ愛着を持って接することが出来る。これが「第二の皮膚」を意識して作られたケータイが持つ、「愛され度」の高さの表れなのだ。
最もコンパクトな全部入り端末
これまで述べてきた愛着のわくデザインが気に入ったなら、今、この時期にMEDIA SKINを買っても後々困ることはほとんどないだろう。
MEDIA SKINは2007年春にリリースされた端末だが、新型機種が次々とリリースされた今でもなお「最もコンパクトな全部入り端末」という地位は揺らいでいない。
見た目もオシャレなうえ、カードケースほどのコンパクトなサイズに、おサイフケータイ、ワンセグ、ミュージックプレーヤーなどすべての機能が入っている。ほかの驚くべき極薄端末もいいのだが、おサイフケータイが使えなかったり、意外と底面積が大きくてポケットになじまなかったりして、都合が悪いのである。その点、MEDIA SKINはスーツを着る男性、カワイイバッグを持ち歩く女性にとって、もってこいの1台になるだろう。
そしてMEDIA SKINを選ぶ理由に、季節も絡んでくる。
アルミニウムやステンレス、チタンなどの金属は丈夫で高級感が出やすい。しかしチタン性の腕時計や裏が鏡面仕上げのiPodなど、肌に触れる金属部材は、冬の朝触ってびっくりしたことはないだろうか? クールだけれどコールドなのだ。それに引き替えMEDIA SKINはウォームな質感から高級感を作り出している。
芸術の秋、食欲の秋、そして人肌恋しい秋。まさにこれからが、MEDIA SKINの季節なのである。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。自身のブログはTAROSITE.NET。
*次回は11月8日掲載予定
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