スクール水着の女の子と一緒に、エルビス・コステロを意識した風のエレキギター・ジャズマスターを抱えた男が踊っている。
これは、主にボーカロイドの楽曲を制作していたキャプテンミライが、ソロとしてリリースした新曲「涸れ井戸スイミング」のPV。キヤノンのデジタル一眼カメラのムービー機能を利用し、制作費用3万円で制作されたものだ。しかし、商業音楽のPVと比較してもクオリティーに遜色はない。
インディーロックシーンでの活動経験もあり、かつ映像作家でもある彼の本領発揮というところだが、「同じことは誰にでもできる」というのが彼の主張で、そのテストケースになることを目標にしたという。新曲とともにスタートさせたオンラインレーベル「バイバイレコード」もその1つだ。
自分で歌い、実写PVを上げ、レーベルを作って、iTunesで売る……。いわゆる「ボカロP」の今後の進路を占う上でも重要ないくつかのチャレンジと、そこから振り返った現在のシーンについて聞いてみた。
見方を変えると面白い
―― いわゆる「ソロデビュー」になるんですけど、なぜ今なんでしょう?
キャプミラ すでに遊び場が提供されていることに気付いたからですね。もう一人でもできるんじゃないかと確信できたし、やったら面白いんじゃないかという、その衝動だけです。もちろん、これでボーカロイドを卒業したわけではないです。
―― どこで確信しましたか?
キャプミラ やっぱりボーカロイドをやったのが大きいと思うんですよね。イベントでCDを売るという文化があるんだという発見から始まって、ボーカロイド関係でiTunesの配信もやって、個人でも簡単にできるんだというのが分かったし(iTunes Store)。それは普通にバンドをやっていたら気が付かなかったですね。
―― 今まで「ボカロP」と呼ばれていた人が、画面に出てきて歌うのは結構なチャレンジだと思うんですよ。
キャプミラ 僕はもともとバンドをやっていたし、顔が出てナンボの世界だから、そこには抵抗が無いんですよね。それに、やっていることは「歌ってみました」と変わらないんです。でも「アーティストが自分の歌を歌ってプロモーションビデオを作りました」と言うと、見え方まで違ってくる。「見方を変えると面白い」が今回のテーマなんですよ。
―― 第一弾のPVはなぜ「カレイドスイミング」のセルフカバーなんですか?
キャプミラ まずボーカロイドでやった曲なら、ボカロ界隈の人たちも入ってきやすい。もうひとつは「スクール水着を着ている女の子に踊ってもらう」というPVのアイディアがあったので。
―― ビデオをイメージしやすいからこの曲なんだろうな、とは思っていましたが。
キャプミラ そう。今回はビデオ先行で。個人でも安い値段で、ちゃんと作れるんだということを示したかったんです。それに曲が「スイミング」じゃないですか。だから夏のうちにやらないと、このネタは来年まで放置されることになってしまう。
―― 放っておくとやんないもんね。
キャプミラ やんないですね。そういう締切が自ずと設定されてしまう曲なので、やれたということもありますね。
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