【後編】『Wake Up, Girls!』監督 山本寛氏インタビュー
「人は再起できる」山本寛監督が語る“地獄”
2014年07月18日 18時00分更新
“地獄”の中で助けられたこと
山本 こうして、新しい挑戦を始めたのはいいんですが……制作現場は大変でした。もう地獄かと。そう思うようなハードさでした。
3回ぐらい心が折れました。現場から逃げたいと思ったことが3回ぐらいあります。逃げたいというのかな、もうやめたいっていう、本当にね、逃げ出したくってぐちゃぐちゃで、もうできない、続けられない……と思ったんですよね。
肉体的にも精神的にも限界だと思ったし、会社自体も大変そうだと。これはもうやめたほうがいいかなと思って、会社畳んで大阪帰って別の仕事でもするか、みたいな話をスタッフにもしていて、えらい不安がられたんですけど。いや、続けましたよ、もちろん。でも一時期はそこまで追い込まれたということですね。
―― オリジナルで7人の新人さんをオーディションして、新人さんのデビューイベントをしながらTV版と劇場版を制作して……大変なプロジェクトだということは、外側から見ても思いますよね。
山本 いや、でもね、全部ちゃんと作りたかったんですね。ちゃんと作って世に問うぞ、というところまで持っていきたかった。
これで完成度が高くできたら全然気分としては変わっていたんですけど。多いですね、自業自得というのか、オウンゴールが多過ぎて。制作スケジュールが追いつかないし、アニメーションとしての出来には決して満足していない。それはもう、悔やんでも悔やみ切れない。悪い評判が出ていたとしたら半分以上は僕のせいです。しょうがない。
―― WUG!の制作でもまた大変な目に遭って、その時も逃げたいと思われたと。そうしたなかで、最終的に逃げずに作り終えることができた理由は何でしょうか。大変な目に遭ったことで見えてきたものというのがあればお聞かせ下さい。
山本 ……これは自分を慰める言い訳なんですが、「結果」だけで一喜一憂していてはいけないんだろうなと。地獄のような状況に陥ったからこそ、制作している僕らスタッフも成長していくんだ、今はその過程なんだ、というふうに思うようにしたんですね。先にお話したことと繋がりますが、「結果」だけが大事なわけじゃないだろうと。
そう思えるようになるために一番大きかったのは、お客さんの熱量でした。
ネットで、WUG!について“ヤマカン”がどれだけ叩かれようが、どれだけアンケートの数字が低かろうが、俺はくじけないぞ、WUG!を応援するぞ、という熱意あるファンがかなりいてくれたんです。それがある程度、数字にも反映してくれて。ビジネス的にもギリギリ成立してくれました。
熱意あるお客さんがついてくれたのなら、今、数字という結果を求めるのではなくて、“地獄”の中でやっているスタッフたちの頑張りが届いているんだ、その過程を大事にして頑張っていくしかないんだと。
声優ユニット『Wake Up, Girls!』
2012年にエイベックスと声優事務所81プロデュースが共同で行なった全国オーディションによって結成された7人の声優グループ。アニメ『Wake Up, Girls!』の声優としてデビュー。歌、ダンスなどもこなし、各地でイベントに出演。
メンバーは、吉岡茉祐(島田真夢役)、永野愛理(林田藍里役)、田中美海(片山実波役)、青山吉能(七瀬佳乃役)、山下七海(久海菜々美役)、奥野香耶(菊間夏夜役)、高木美佑(岡本未夕役)。
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―― 現場であがいた過程が大事だと。そしてビジネス的に成立するというところまでいったのですね。
山本 数字のなかで一番大きいのはWUG!キャストの観客動員や関連グッズです。7人の稼働が半端なく引く手あまたなので。まだお披露目して半年ちょっとなのに、これだけ引きがあるというのはなかなかない。いろいろな番組で呼ばれています。あとはライブの集客ですね。
―― エイベックスの田中プロデューサーから、ファーストライブでは、およそ2000人収容のホールに、6000通の応募が来たというお話をうかがいました。
山本 はい。出たての新人声優が、現時点で6000人のハコを埋められる。もうちょっとで武道館じゃないかというところまで既に来ているというのは、とてもうれしいことですね。
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