1インチセンサーの画質で十分?
そんな私でしたが、あるカメラには度肝を抜かれました。貴社の「QX100」でございます。Wi-Fiでスマートフォンに接続してファインダー代わり使ってしまおうという憑依の発想。目玉おやじのようなレンズとセンサーだけのカメラでありながら、35mm換算28mmから始まるバリオ・ゾナーが付いていて、広角端はF1.8の明るさ。
おお、これは面白い。最近ソニーぶっ飛ばしてるじゃん。と、感心はしたのですが、ノーファインダーで撮る気合がないのなら、アレは撮影の度にWi-Fiで接続する必要あるのですよね? ちょっとかったるくないですか? どうですか? でも他媒体様のレビューを読んでいたら「1インチセンサーとツァイスのレンズはコンデジのRX100M2と同じ。ならば画質にも期待できるだろう」云々という記述があり、そこで初めて「RX100」というカメラの存在を知りました。
私はコンパクトデジカメというものをハナからバカにしておりまして、90年代の終わりにいくつか買ったのを最後に、これまでまったく触れてこなかったのであります。ところが、このRX100で撮られた画像をウェブで検索しまくった結果、貴社1インチセンサーの性能が全然バカにできないものであると知り、裏面照射型センサーが載る新型RX100M2と迷ったものの、ぐっとお安いRX100を中古で購入。即実戦投入し、以降、ウェブ媒体紙媒体を問わず、instagramに上げるカレー画像からアーティスト様の撮影まで、全部コレで済ませておるような次第です。
APS-Cセンサーの23.4mm×16.7mmに対して、13.2×8.8mmの1インチセンサーは面積比で1/4程度ですが、私の仕事にはこれで十分な画質ではないかと。暗くても手ブレ補正がすごいのでちゃんと写っているし、「プレミアムおまかせオート」というモードでは輝度差が激しければカメラが勝手にHDR撮影をはじめて、なんとか絵にしてしまう。しかもバッテリー入れて240gってなに? ああ、もっと早く知っていれば、もっと早く荷物を軽くできたのになあ、と。
ある製品の発表会では、同席した他媒体の記者さんもRX100をお持ちだったので「あ、やっぱそれいいですよねー」と声をかけると「もう全然使えますよねー。私なんかプレミアムおまかせオートに入れっぱなしですー」と申されており、自ずと同業者としての連帯意識も高まり、なぜか語尾も伸ばしながら、2人揃ってカチカチカチとHDR撮影のシャッター音を鳴らしていたのでした。
軽くて小さくて、実用上十分な画質。触っているうちに、なんとなく往年のハイエンドコンパクトカメラ、ミノルタ「TC-1」を思い出したりもして、ああ、そう言えばミノルタはコニカミノルタとなり、そしてカメラ事業をソニーが引き継いだのだなと。そういう連想で、私の内なるカメラマニア心が勝手に納得度を高めて行ったのです。
ただ、RX100には1つだけ難があります。それはスペックを見て分かっていたことですが、ワイド端28mmで5cm、テレ端100mm55cmという最短撮影距離。これはブツ撮りには使えません。
私はある程度ワーキングディスタンスの取れる望遠マクロの性能が欲しいのですが、これくらいの数字だと一眼カメラのボディー程度の物を画面いっぱいに収めるのが関の山。できれば展示会などの撮影で、基板に載っているパーツの記号が分かる程度の性能が欲しいのです。そもそもコンデジにそんなマクロ性能を求めるのが間違っているわけですが、これだけよく写るなら何とかならないかと、欲も出てくるのであります。それさえできれば一眼が捨てられる。
もうひとつ贅沢を言えば、やっぱりファインダーで撮影したいのです。背面のモニターを見ながらの撮影は気楽でいいですが、古い人間なのでビシッと行くときはファインダーを覗いてビシッとキメたいんですよ、ビシッと。RX100のアップデート版であるRX100M2にはマルチインターフェースシューが付いていて、エレクトリックビューファインダーの「FDA-EV1MK」が付けられるわけですが、これが少々大きく、小型ボディーのメリットを損ねてしまう上に、お値段が3万円台と少々お高い。
ううむ、どうしたものか。と、腕組みしているうちに、望遠マクロも使えてEVFも付いたRX10が発表されたわけです。ソニーのみなさま、本当にありがとうございます。