今回のことば
「家電メーカーであるソニーが発売するαから、カメラメーカーの1社であるソニーが発売するαへとステップアップする時期に入ってきた」(ソニーマーケティングの河野弘社長)
ソニーのαシリーズに対する評価が高まっている。
2016年日本カメラグランプリの大賞に「α7RⅡ」が選出されたのはその最たる例だろう。ソニーが、レンズ交換式で大賞を受賞したのは初めてのことだ。さらに、同じく日本カメラグランプリのカメラ記者クラブ賞には、RX10ⅡおよびRX100Ⅳが選ばれ、2016年は、カメラ業界の権威あるアワードでダブル受賞となった。
さらに、αシリーズ向けのG MASTERレンズが、欧州の権威あるTIPA Awards 2016およびEISA Awards 2016-2017を受賞したという快挙もなし遂げた。
世界各国で、キヤノン、ニコン、ライカといったカメラメーカーを差し置いて、ソニーのαが大賞を受賞しているのだ。
まさに、カメラ業界において評価される製品が登場していることの裏返しだといえよう。
さらに、プロフォトグラファーやビデオグラファーなどを対象にしたソニー・イメージング・プロ・サポートの会員数は、2015年にα7RⅡおよびα7SⅡを発売以降、急速に拡大。会員数は、前年同月比2倍の伸びをみせているという。
ソニーマーケティングの河野弘社長は、「雑誌や広告などの商用写真を中心に撮影しているプロフェッショナルのほか、ポートレートの撮影にはα7RⅡが最適であるといった声があがったり、暗所の撮影にはα7SⅡがいいといった声があがったりしている。あるいは、動物の撮影などデリケートな環境ではソニーのサイレントシャッターが適しているといった声も出ている」という。
αシリーズは動画も人気
さらに、ソニー・イメージング・プロ・サポートの増員で特徴的なのは、「静止画だけでなく、動画撮影も行なっているカメラマンなどの会員数が増加している」という点だ。
ウェブの広がりとともに、動画撮影に対するニーズが増加。ソニーのαシリーズの強みが発揮できる領域と位置づけられているという。「いま、プロフェッショナルがソニーに求めているのは、静止画を撮影するという使い方だけでなく、αシリーズを活用して動画を撮影したいというニーズ。ここに、ソニーの大きなビジネスチャンスがある」と語る。
もともと動画で実績があるソニー。加えて、自らが持つイメージセンサーをベースにした製品強化のロードマップを描くことができ、さらに画像処理技術のアルゴリズムも自前で開発。そして自社でレンズも開発し、それに対する評価も高まっている。これもプロフェッショナルが評価している理由のひとつだ。
このようにソニーは2016年において、カメラで高い評価を得た。そのカメラづくりへの評価は、まさにカメラメーカーの一角を担いはじめたことを証明するものだといっていい。
だがソニーには、カメラメーカーと言い切るにはまだ整っていない「もの」があった。
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