辞めたくなったことはなし。入れ込みすぎるのは怖い
―― では、管理者の仕事の実際を教えてください。アンサイクロペディア日本語版には現在13人の管理者がいますが、それぞれの人が自由に動いている感じですか? それとも組織だった感じで?
Muttley それぞれが自分のペースでやっている感じだと思います。仕事やプライベートの兼ね合いもあるんでしょうけど、ブロックや記事の保護みたいな管理者権限をほとんど行使していない管理者も多い印象ですしね。13人といっても、実働は数名くらいじゃないかな……。私が管理者になった頃は日本語版が誕生して1年以上経っていましたが、投稿ブロックを実施した履歴さえ見当たらなかったですから。ルールや方針も、本当に皆無に近かったんですよ。
まあ、管理者というのは、もめ事をよく起こす人の対応をしたり、荒れているページの編集をブロックをしたりと、面倒なところに首を突っ込まないといけないんですよ。面倒だし、別に給料が出るわけでもないですし、感謝されないことも多々……。それが嫌だといって、一般のユーザーと同じように各ページの編集や執筆行為に逃げちゃうというパターンもありますしね。
―― でも、「運営関連文書」のカテゴリページからは、割としっかりしたルールが作られている印象を受けます。
Muttley 最近はなかなか活きのいい管理者がいくらかいて、いい方向に機能している部分はありますね。だから私も、昔みたいに3~4時間もサイトに張り付いてることはなくなりましたね。「後進に任そう」みたいな感じで(笑)。
昔はもう、「ないなら自分が方針やルールの枠組みを作ってやろう」と、アンサイクロペディア英語版を参考にしたり、サイトオーナーのカナダ人の方でカール・オースティン・ベネット氏という方に連絡とって色々聞いたりしました。それで「こういう枠組みが必要じゃない?」とか「こういう場合は、こう対応すると決めない?」とか……まあ、鬱陶しく感じる人もいたと思うんですけど、他の管理者に説いて回りながら整備していったんですよ。
―― その押し引きは難しいところですよね。「必ずしも負わなくていい」責任を果たそうとすると、圧倒的な結果が出るまでは出しゃばりという嫌われ役になってしまう。
Muttley Wikiサイトみたいなところの管理者なら、みんなそういう葛藤はあると思います。でも私の場合は「じゃあやめようか」とはならないんですよ。周囲から何か言われるのが気にならないわけではないですけど、不思議と。
逆に怖いのは、入れ込みすぎるところですかね。アンサイクロペディア日本語版に関していえば、そんな必死に管理しなくてもいいけど、やろうとしたら際限なく責任が背負えてしまうんです。だから歯止めをかけないと、精神を病むところまで行ってしまう。だから、熱中しすぎたと思ったら、パソコンの前に座らないようにしています。
―― ちなみに、管理の時間配分はどうやっているんですか? 本職の合間に、アンサイクロペディアとChakuwikiを管理しているんですよね。
Muttley 仕事の時間とは分けていますね。もっとも活発だった頃は、終電くらいまで会社で仕事して、帰宅したら午前3~4時くらいまでずっとサイトに張り付いて、2~3時間寝て、6時半に起きて出勤……という感じでした。睡眠不足になりましたけど、その分休日にガッツリ寝て。
ただ、管理に時間を割いているのは、ほとんどアンサイクロペディアですね。Chakuwikiのほうは随分前から、古参の管理者の人がしっかり回しているので、私しか持っていない権限※が求められるときだけ動く感じです。
※ Muttleyさんしか持っていない権限 : チェックユーザーの権限。荒らしの疑いのあるユーザーのIPアドレスなどが調べられる。集団での荒らしを装っている場合も、この権限によってある程度実態がつかめる
この連載の記事
-
第99回
トピックス
マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」 -
第98回
トピックス
「もし森ガールが森へ入ったら」アサイさんの超地道な努力 -
第97回
トピックス
死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」 -
第96回
トピックス
NTT研究者が“錯覚”サイトにかける純粋な感情 -
第95回
トピックス
ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ -
第94回
トピックス
諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ! -
第93回
トピックス
探検コムの「広く浅く」が深すぎる! -
第92回
トピックス
金髪ギャル語でニュートリノ、Shoさまが熱い! -
第91回
トピックス
「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る -
第90回
トピックス
電子書籍を紙で売る! 「コトリコ」挑戦への道 - この連載の一覧へ