震災で考えた人同士の絆と助け合い
難波 制作中の3月に、震災が起きたんですね。自分も、移動中の都内の地下鉄の中で遭いまして。その時は、このまま地下で埋められたらどうしようと恐怖でいっぱいで、慌てて駅を出たら、そこら中のビルから人がわーっと出てきていて。ビル自体も大きく揺れているんですね。
交通手段がない中で、みんなが思った以上に整然と対応していて、協力しながら歩いて自宅に帰っていく様子を見たり、家族や友達からメールとか電話がすぐに来て、お互いに大丈夫かって連絡を取ったり。その様子は、“嵐”と重なるところがありました。避けては通れない危機があったとき、自分たちが感じた恐怖や、皆で助け合う様子を目の当たりにして、やはりこの時代は助け合わなければ乗り切れないのであろうなと。
「GOSICK」も、ヴィクトリカと一弥が手を取り合って生きていけるような時代を自分たちで作り上げていく、そういう話で。人は独りでは生きていけないということや、人同士の絆の大切さ……「GOSICK」に関わったときから気にかけて作り始めてはいたんですけれども、今この時期、より一層強く感じますね。
©2011 桜庭一樹・武田日向・角川書店/GOSICK制作委員会
―― 「GOSICK」では、ヴィクトリカと一弥の絆が中心になっていましたが、どんな絆を目指そうと思いましたか。作品を見ていて、「恋愛」というところがゴールではないような印象を持ったのですが。
難波 広く言えば「人間愛」を描きたかったというところがあります。恋愛の場合は、同性にない部分を異性に求めるところがあるけれども、性別を越えて、相手の存在自体を愛することが、人間愛につながっていくのかなと。
あとは、人間愛というのは、相手ひとりだけじゃなくて、相手に付随する“周り”も一緒に愛することになってくるのかなと思うんですね。それは、相手が今ここに存在しているのは、その人の親がいて、周りの環境があって、その人が出来上がる過程があるからこそで。その人だけを愛するというのが恋愛感情だとしたら、その人が持つ背景もひっくるめて愛せることが、人間愛という大きな愛情になっていくのかなと。
震災後の今も、大きな被害を被った東北に対する支援とか、様々な助け合いが日本中で行なわれていますけど、これも、その人たちの背景まで愛することとつながっている気がするんです。自分の大切な人が育った場所、土地、周りの環境、友人やら家族やら周りの人たちというものもひっくるめて愛せるからこそ、苦労している人たちを助けたいという気持ちにもつながってくる。それが人間愛とか人同士の絆なのかなと思いますね。
「GOSICK」は、愛する人々を守るということもテーマの1つで、一弥とヴィクトリカも、愛する者たちを守るために必死に働きかけていく、そんな姿を描いています。
©2011 桜庭一樹・武田日向・角川書店/GOSICK制作委員会
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