西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第72回

キーボード付きAndroidの本命？ Eee Pad Transformer

　むしろ、筆者が評価したいのは「作り込み」に類するソフトのチューニングだ。Androidには標準で用意されていない「ファイルマネージャー」を用意して、「パソコン的な使い方で戸惑わない」ようにする。あるいは、キーボードからの音量変更やタッチパッドオフなどの操作を、「オンスクリーンディスプレー」で表示するといった点は、「キーボードが付いたAndroidタブレット」としての完成度を上げるのに一役買っている。

ファイルマネージャー機能。パソコン的に使うなら、やはりあった方がありがたい。フォントサイズが大きいが、使い勝手は悪くない

Transformerのオンスクリーンディスプレー。キーボードで音量調整やタッチパッドのオンオフなどを行なうと、その様子が表示される

　だからといって、「パソコンとまったく同じことをすると、まだイライラする」という評価を変えるつもりはない。だが「改善の努力が見える」点は評価したい。

　そもそも、これだけ長時間バッテリーで動いて、作りがしっかりしていて、6万円を切る価格で買える「ノートパソコン」はそうそうない。「低価格だが作りが良く、とにかくバッテリーの心配をしなくていい端末を作る」テクノロジーとしてAndroidを採用した製品、と見ると、現状では最上の出来と思える。

　ネットを見るために、ネットブックを選ぶ必然性はもはや薄い。そのくらいなら、Transformerを選んだ方が満足できるはず。そこまで言える製品になっているのは間違いない。これでも不満なら、10万円用意してそれなりのモバイルノートを買うべきだ。

お勧めする人

・低価格でも、長時間使える「ネット端末」を探している人

・Androidを「ビジネスツール」として使いたい人

Eee Pad Transformer TF101の主な仕様
CPU	Tegra 2(1.0GHz)
メモリー	1GB
グラフィックス	CPU内蔵
ディスプレー	10.1型ワイド 1280×800ドット
ストレージ	内蔵フラッシュメモリー 32GB
無線通信機能	IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1
インターフェース	タブレット：miniHDMI出力、カードリーダー(microSD/SDHC対応)、マイク/ヘッドホン兼用ジャック ドック：USB 2.0×2、カードリーダー(SD/SDHC/MMC対応)
サイズ	タブレット：幅271×奥行き177×高さ12.98mm ドッキング状態：幅271×奥行き185×高さ28mm
質量	タブレット：約680g、ドッキング状態：約1.3kg
バッテリー駆動時間	タブレット：約9.5時間、ドッキング状態：約16時間
OS	Android 3.0
価格	5万9800円
発売予定日	6月25日

■関連サイト

• Eee Pad Transformer 製品情報
• ASUSTeK Computer

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPhone仕事術！」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う？　世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ！ クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか？」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)。最新刊「災害時ケータイ＆ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)が発売予定。