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Mobile World Congress 2011 レポート 第6回

デュアルからクアッドへ 急速に成長するARMプロセッサ

2011年02月18日 21時00分更新

文● 塩田紳二

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NVIDIAブースで展示されていたクアッドコアの新プロセッサー搭載機のデモ

 「Mobile World Congress 2011」(MWC)の主役は基本的には携帯電話だが、今回のMWCではプロセッサーメーカーの動きも目立った。

コアの設計だけを行ない
実際の製品は半導体メーカーに任せるARM社

 携帯電話ではARMプロセッサーが広く使われている。そしてARMプロセッサーは、普通の携帯電話の中で“アプリケーションプロセッサー”として使われている。

 アプリケーションプロセッサーとは、携帯電話の画面やキー操作などのユーザーインターフェースや内蔵アプリケーション、Java実行などを行なうものを指している。そして、こういう呼び名があるのは、通信関連を制御する「ベースバンドプロセッサー」というものも別に存在するからだ。

 いわゆるARMプロセッサーは、イギリスのARM社が設計しているが、ARM社自身は完成品のプロセッサーを売らず、他社に設計や具体的な回路パターンなどを販売し、実際の製品は半導体メーカーが製造する。このときに、携帯電話や他の組み込み分野に最適になるように周辺回路を組み込み、1チップの「SoC」(System On a Chip)を作り上げる。

ライセンスを受けて独自に改良するケースも
多数のメーカーが色々な製品を提供している

 こうした半導体メーカーにはいくつかパターンがあり、ARM社が設計したプロセッサーがそのまま使われるケースもあれば、ある程度の改良を加えて自社製品に取り込むケース、仕様だけを使い、実装(命令処理パイプラインなど)は独自なものとするケースなどもある。

 またARM社は設計だけ行なうといっても単に回路図だけを作るわけではなく、製品にはしないものの試作品を作り、動作を検証する。ライセンスを受ける側のメーカーも、自社の半導体プロセスに最適になるように改良したり、統合する周辺回路とのバランスなどを考慮した改良を行なうこともある。

 ARM社のプロセッサコアのライセンスを受ける企業は多数あり、その中には、こうした改良作業をメインにして、実際の製造は他社に依頼するといったところから、自社で半導体工場を持ち、最終製品としてのプロセッサーを開発するところもある。またARM社が提供した仕様を基に独自のコアパイプラインなど構成したものには、クアルコムのScopion(Snapdragonのコア。SanpdragonはSoC製品としての名称)がある。

スマートフォンの性能向上とともに
ARMのコアも性能が伸びている

 さて、今回のMWCでは、デュアルコアプロセッサーを搭載したスマートフォンが多数発表された。これらの多くは、ARM社の「Cortex-A9」をベースにしている。ARM社のプロセッサーは高性能で複雑なOSなどの実行に向いた「Cortex-A」系列、組み込み用途のうちリアルタイム性が高い「Cortex-R」、組み込み用途で低コストの「Cortex-M」がある。

 Cortex-Aの系列には、現在広く使われている「Cortex-A8」と、今年の新製品に採用されている「Cortex-A9」、そして2012年以降に登場する予定の「Cortex-A15」がある。新製品に使われているCortex-A9は、初めてアウトオブオーダー実行機能を取り込んだARMプロセッサーだ。

 ARMプロセッサーの場合、設計時の目標として最大クロックや周波数1MHzあたりの性能(Drystone MIPS値として定義されている)が決まる。昨年の上位クラスのスマートフォンで広く使われていたCortex-A8では、最大クロックは1GHz、性能は2.0DMIPS/MHzとなっている。これに対してCortex-A9は、最大クロックは2GHzで2.5DMIPS/MHzとなっている。同じ周波数なら、A9はA8の1.25倍の性能があり、最大クロックで比較すると、2.5倍の性能比となる。

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