音や映像でも「ランボルギーニ」を追求
あえて触れてはこなかったが、実はVX6には姉妹機「Eee PC 1215N」がある。単純にパソコンとしてのハードウエア性能でいえば、VX6との差はない。
ではなにが違うのか? それが冒頭で触れた「ランボルギーニモデル」という点だ。ASUSは何度かランボルギーニとのコラボモデルを商品化しているが、これまではネットブックではなく、より上位の製品に採用されることが多かった。それが今回Eee PCブランドで展開されたのは、ここまで触れたような「ネットブック離れした内容」に対する自信といえるかもしれない。
ランボルギーニモデルである所以はいくつかあるが、まずはそのデザインだろう。箱すら特製の化粧箱であり、ボディーの仕上げも非常に高級感がある。デザインそのものは、正直ちょっとクセがある。作りは非常に凝っているが「いかにもランボルギーニ」という印象を受けるので、好みは分かれるだろう。しかし、低価格なノートパソコンとは思えないしっかりとした作りであることを否定する人はいないはずだ。
キーボードはいわゆるアイソレーションタイプ。若干中央部がゆるい印象も受けたが、操作感は良好で、違和感は感じなかった。タッチパッドが大きめになっており、それも操作性向上に寄与している。
ランボルギーニへのこだわりはハードの部分だけではない。電源を入れると、最初に表示されるのはメーカーであるASUSのロゴでなく、ランボルギーニのロゴだ。そしてサウンドも、無機質なビープ音ではなく、ランボルギーニのエンジン音である。
当然のことながら、壁紙もランボルギーニ仕様。そしてスクリーンセーバーも、ランボルギーニ仕様のオリジナルなものだ。どれもけっして付け焼き刃なものではなく、しっかりとしたこだわりが感じられる。
ここでは、あえてその音やアニメーションをお見せすることはしない。特別なモデルを選んで買った人の特権なので、気になる方はぜひ手に入れて体験してみていただきたい。
そしてもうひとつ、VX6だけの特徴が「スピーカー」である。VX6では、「B&O ICEpower」の認証を受けた特別な音響システムを搭載している。
ICEpowerとは、高級音響機器メーカーであるBang & Olufsenの関連会社で、カーオーディオ向け製品を供給している。特にデジタルアンプ技術で知られている企業だ。最近は携帯電話などにも利用されているようだが、ICEpowerの本領といえばやはり「車」である。それをわざわざノートPCに搭載したのも、ランボルギーニに対するこだわりゆえだろう。
実際、VX6の内蔵スピーカー出力は迫力がある。妙なびびりも感じにくく、特に中高音部の抜けがいい。実はVX6の電源を最初に入れた時は、音響システムや起動音に関するこだわりを知らなかった。そのため、あまりによい「起動音」が聞こえてきたので、正直度肝を抜かれたほどだ。
もちろん、スピーカーサイズの制約はあるので限界はあるが、この価格帯でこれだけの音が出ているのは、十分賞賛に値する。
★
トータルに見れば、VX6は「こだわり」を感じられるとてもいい製品である。ランボルギーニへのこだわりに共感できるかどうかは人それぞれだろう。だが、こういった製品を作れることそのものから、ASUSが「コンシューマ向けPCブランド」としての地位を高めたい、と本気で思っていることが伝わってくる。
正直日本では、ASUSよりブランド力のあるパソコンメーカーはいくつもある。だが、それらのメーカーの製品は、VX6ほど「こだわって」作られているだろうか? そんなことを考えたくなるほど、VX6からは「よいパソコンを作る」ことへのこだわりが感じられるのである。
- お勧めする人
- ・ランボルギーニが好きでたまらない人
- ・低価格だが「こだわり」の見えるパソコンが欲しい人
Eee PC VX6の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Atom D525(1.80GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | 次世代NVIDIA ION |
ディスプレー | 12.1型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 320GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
インターフェース | USB 3.0×2、USB 2.0×1、HDMI出力、アナログRGB出力、100BASE-TX LANなど |
サイズ | 幅297×奥行き204×高さ23~38mm |
質量 | 約1.5kg |
バッテリー駆動時間 | 約5時間 |
OS | Windows 7 Home Premium 32bit |
価格 | 7万4800円 |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)。
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