ソフトキーボード採用は「振動」で決まった
結果として、W100にはキーボードがなくなり、「板」としても「クラムシェル」としても使える形状となった。物理キーボードは姿を消し、ソフトキーボードとなる。
ソフトキーボードに拒否感を感じる人はまだいるだろう。だが、現在のソフトキーボードは、昔のそれに比べて相当に良くなってきている。W100も例外ではない。三好氏の言葉にもあるように、W100のソフトキーボードの特徴は、キートップが「大きめ」であることだ。
W100は7型ワイドのディスプレーを2面搭載している。ソフトキーボードにはいくつかレイアウトが用意されているが、文字入力の基本スタイルとなるであろう「Simple Type」では、キートップのサイズが(本体サイズで)1ランク上のモバイルノートに近いサイズとなる。この辺りは、iPadのソフトキーボードにも共通の要素である。
キートップが大きめであるため、入力速度は意外なほど速い。もちろん物理キーと同じにはならないが、ビュワー向けの「代替品」という印象ではない。
その秘密は、タッチに「物理フィードバック」が組みこまれているためだ。入力のためにタッチすると、内蔵のバイブレーターが振動し、確実に「入力された」ことをユーザーに伝えてくれるのである。
三好「ソフトキーボードでいけると思ったのは、Haptics(触覚)の振動によるインターフェースがモノになりそうだ、とわかったからです。試しにテスト基板で実装してみると、周囲の反応は非常によかった。当時、日本の携帯電話では実装例もありませんでしたし、iPhoneも利用していません。7型サイズのディスプレーでは、このインターフェースがないとつらいだろうと判断し、搭載することになりました」
「製品では、このサイズでもモーターひとつで振動を実現しています。最初は『モーター3つ』という話もあったのですが、なんとかひとつでいけるという話になりました」
渡辺「それが可能になった理由は、構造上の工夫にあります。振動用モーターは、底面側右上あたりにあります。使っているのは携帯電話のバイブ用モーターと、構造上は同じものです」
「しかし、ディスプレーユニットは重さが350gくらいあります。さすがひとつのモーターでは、それ全体を揺らすことはできません。モーターはフラットな表面の裏についているんですが、実はタッチ画面部分だけをフローティング構造にしているのです」
三好「ですからよく見ると、タッチパネルと周囲の間に、ほんの少しすき間があるんです。製品版では、ほとんど見えるか見えないかくらいのすき間ですが、確実に浮いています」
渡辺「浮かせてしまえば、タッチパネル自体は50gくらいなので、それをひとつのモーターで揺らすことができます」
そうなると気になるのは、「振動」でどのくらいの電力を消費するのか、という点だ。
渡辺「評価してみましたが、Hapticsでの電力消費は20mWh程度です。確かにモーターを使うので、瞬間的な電流は大きいのですが、平均的な消費を見るとあまり大きくなりません」
実際のW100を見ると、高い工作・設計精度が求められるもので、多くのメーカーがすぐに採用できるような構造には見えない。だが、大画面でタッチ入力する場合、この振動の効果は非常に高い。少なくともこの点においては、W100開発チームの狙いは当たっている。
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ