実は以前から検討されていた2画面化
W100が「librettoの伝統」を守っているのは、「サイズ」くらいのものだろう。「2画面」という、パソコンとしては新しいカタチがやはり目を惹く。どうしてもニンテンドーDSを想起させるものがあるし、東芝側も「そう見えるだろう」と冗談めかして笑う。
だが、パソコンを「2画面で作ること」そのものは、急に浮上したものではないようだ。ハードウエア開発を担当した、PC開発センターPCシステム設計部主務の渡辺 玄氏は「実際には、2画面はずいぶん昔から検討していた構造」と語る。その上で、実際にやるか否かを考えるのが問題だったようだ。
三好「ソフトキーボードの全面採用を考えはじめたのは、ずいぶん前からです。しかし、実際に『これでいける』と考えたのは、昨年夏あたりのことでしょうか」
「本当は、現在よりもさらに2mmくらいサイズを小さくしたかったくらいなんです。このサイズになってくると、そのまま小さなキーボードを入れて、パソコンの『片側』を固定してユーザーの自由度を奪うのがいいのか、ということを考えました。それなら、この際ソフトキーボードにしてしまおうと」
「2画面ありきでスタートした企画ではないのですが、ソフトキーボードならなんとかなるんじゃないか、と考えたのは事実です」
W100のデザイン担当である、デザインセンター情報機器デザイン担当参事の杉山宏樹氏はこう話す。
杉山「どのようなカタチでも、キーボードを搭載している現状のデザインでは、パソコンの用途は変わらないと考えました。しかし、2画面なら変えられるかもしれない」
「現代はさまざまな情報機器が登場し、電車の中や路上でも皆が利用しています。そういった要素をパソコンも持たなくていいいのか? という意識もありました。両手の10本指で打つ物理キーボードである限り、それは膝の上で利用するものになります」
「結果的に、W100は両手でタイプするキーボードから脱却し、パソコン的なイメージからは離れたかも知れません、でも、パソコンをデザインしようという気持ちはあったんです」
実際にW100のデザインを担当した二宮正人氏は、こうも語る。
二宮「スレート型は大画面になるので、カバン内での収まりが悪いんです。また、キーボードを入力する際に本体を傾けないといけない。しかしどちらも、折りたたみならOKです。形状での優位性はある、と考えたのです」
「ちょっとしたことですが、中央のヒンジも平行に曲がるように、内部にリンク機構を入れています。二軸ヒンジを採用した商品は少なくありませんが、平行に曲がるようにリンクして動くものはほとんどないと思います。これは、『本のように開閉してもらいたい』というデザイン上の要求と、技術的な面、両方からの判断です。最初に二軸ヒンジのパーツを見た時には、動き方にちょっと感動しました(笑)」
三好「実はiPadが出た時に、『板状で助かった』と思いましたね(笑) 差別化できますから」
杉山「本当は中央のヒンジ部をもう少し薄くしたかったんですが、残念ながら現状ではこれが精一杯です。他方で、この部分を持っても使いやすい、という利点もあります」
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ