このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第48回

iPad 3G版の日本向け製品版をいち早くテスト!

2010年05月26日 00時01分更新

文● 西田 宗千佳

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 もうすぐ、ようやく日本でもiPadが発売になる。予約が早々に締め切られたことから、アメリカだけでなく日本でもしばらくは入手難が続くかも知れない。

 では、モバイル機器として見た場合、iPadは「使える」存在なのだろうか? 今回、発売より少し早く、「日本版」のiPad 3G版を入手できた。3G版がどのような使い勝手なのか、パソコンをiPadに置き換える価値はあるのか、チェックしてみよう。なお、iPadの外観やハードウェアについての話題は、こちらの記事を参照していただきたい。

iPad

iPad (写真は米国WiFi版です)


大きさにこそ「価値」がある!
バッテリー駆動時間はモバイルノート以上に優秀

 本連載でも触れたように、iPadは「サイズを大きくしたiPhone」といっていい。ソフト的に言えば、カメラや携帯電話網による通話機能など、iPhoneにあってもiPadがハード的に持ち合わせていない機能をのぞけば、iPhoneにできてiPadにできないことはない。

 だが、iPadはその「サイズ」であるがゆえに、非常に大きな価値を持っている。iPadを使い始めた人が例外なく感じるのが、「1024×768ドットなのに、なんて広いんだろう」ということだ。シングルウインドウ(というより、マルチウインドウの概念がない)だと、こんなにも画面は自由に使えるのか、という印象を受ける。

 ウェブ表示も、フォントレンダリングのクオリティーが高いこともあってか、パソコン以上に見やすい印象を受ける。特に縦画面での編集・表示領域の広さはきもちいい。パソコンでディスプレーを縦に回転させて、「ポートレート表示」で使った時に近い感触だ。

 それが膝の上で使えるのだから、快適でないはずがない。パソコンとは違う、「机で向き合って使うのではないコンピューター」が、iPadの正体といってもいいだろう。

 とはいえ、「リビングで使うコンピューターだ」と言われても、日本のモバイラーは納得しないだろう。「ノートパソコンの代わりに持ち運ぶ価値はあるか否か」が聞きたいのだろうから。

 というわけで、ここでその答えを出しておきたい。それは「長期的に見ればイエス、今すぐならば人による」というところだろうか。

 まず、モバイル機器としてのiPadの利点は、大きさの割に軽いこと、そしてバッテリー駆動時間が驚くほど長いことだ。iPadは最も重い「WiFi+3G」モデルの場合でも約730g。最軽量とは言えないが、多くのモバイルノートよりも軽い。分厚いガラスの板とアルミボディーのおかげで、重量よりも重く見えるが、十分「軽量級」だ。

 それでいて、バッテリー駆動時間は長い。カタログでうたわれる「10時間」は決して理論値ではなく、実際に無線LANを利用しつつ、ウェブを見たりアプリケーションを使ったりしても、1時間でおおよそ10%のバッテリー消費で済む。そこから計算すれば「10時間は持つ」ということになるだろう。

 同様に、3Gモデムを使った通信に切り換えてみると、おおむね12%程度の消費となった。ここから計算すれば、3Gだけなら8時間半程度の駆動時間となる。通信しつつこれだけ動けば、文句を言う人はほとんどいないだろう。実際、筆者が試用したり、実際に仕事に利用したりした機材の中で比較しても、「Xバッテリー装備時のVAIO X」などの一部の例外を除けば、これほど「バッテリーの心配をしなくていい」機材はなかった、と言っていいだろう。

 理由はおそらく2つある。ひとつはプロセッサーである「A4」の消費電力が低いこと。そもそもPC系プロセッサーよりパワーがない分、消費電力では有利なアーキテクチャーだから当然ともいえる。もうひとつはバッテリー容量がとても大きい、ということ。いくつかのウェブメディアで伝えられる「分解写真」を見る限り、大きな本体の中身はほとんどがバッテリーだ。

 逆に言えば、iPhone OSという「機能限定ではあるが、ユーザーに不便を感じさせないOS」をiPadに使う意味はここにあるのだろう。現在のPC系アーキテクチャーでは、仮にAtom Z系プラットフォームを使ったとしても、iPadほど低消費電力にはならない。だがiPadでは、A4というハードに特化してOSをチューニングし、用途も限定していくことで、恐ろしく消費電力当たりの動作効率がいい環境を作り出すことに成功している。

 パソコン用OSと違い、サスペンドからの復帰でもたつくこともなく、一瞬で利用可能になるのも、モバイル用途では有利だ。

 ソフトキーボードのできも悪くない。元々アップルが採用する静電容量式のタッチパネルは操作追従性が良く、思わぬ誤動作が少ないのが美点だ。それがうまく作用して、違和感のない操作性に仕上がっている。日本語入力の変換効率はさほどでもない。しかし、「メールやウェブへの書き込み程度ならこれでも十分かな」と思わせる程度には快適に使えるので、致命的とはいえないだろう。どうしても物理キーボードが欲しいならBluetoothで接続すればいい、という点もプラス評価である。

ソフトキーボードの操作感は悪くない。指を「しっかり下ろしてから上げる」「10本全部使わず、親指とひとさし指くらいで入力する」と効率がぐっと上がる印象

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン