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佐藤大輔氏・ロングインタビュー

PRIDEと似ている──「煽りV」の映像作家が語るニコ動

2010年04月07日 12時00分更新

文● 広田稔/ASCII.jp編集部

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「命の恩人」に言われたから作った

── まず、どういった経緯でニコ動の「煽りV」を作るようになったんですか?

佐藤 2007年SP1バージョン発表会のときに、川上さん(ドワンゴ会長の川上量生氏)からお話をいただいたのがきっかけですね。もともと僕はPRIDEで選手紹介映像を作っていて、「会社を辞めちゃえ」と思うくらいに大切なイベントだった

 そのPRIDEが潰れそうなときに大きなお金をだしていただいて、スポンサーとして支え続けてくれた企業がドワンゴさんだったんです。安くこういう言葉を出すのは嫌なんですが、いわば命の恩人ですから、恩人が「やって」って言ったことは何でもやります。そんな存在、自分の人生でなかなかいないですけどね(笑)。

PRIDEはフジテレビで放送されていたが、2006年に打ち切りとなった。佐藤氏は当時、フジテレビに所属していたが、のちにPRIDEの「煽りV」を作るために同社を辞めている。


── 最初にお話をいただいたときはどう思われました?

佐藤 実はニコニコ動画ってよく知らなかったんですよ。でも触れてみて、媒体のよさは一目瞭然でした。当時はYouTubeから引っ張ってきた動画にみんなでコメントを付けて楽しむというスタイルでしたね。

 映像を作るために川上さんからレクチャーを受けたんですが、そのときにとにかく「物語」を語ろうとするんですよね。物語を熱っぽく語って、絵にしてくれと。

 例えば、2008年夏に開かれたニコニコ大会議のオープニング映像では、サーバーがDDoS攻撃という「迫害」を受けたこととか、伝説の吐血プログラマー・戀塚さんがニコ動のコメントシステムを3日で作ったこととかを取り上げました(関連記事)。ユーザーも巻き込んだ「苦難の歴史」がリアルタイムに進行している様を表現してくれという。

【ニコニコ動画(夏)】ニコニコ大会議2008 OP



 その話を聞いたときに、僕らがPRIDEでやってきたことと似てていいんじゃないかと感じました。


── ニコ動の「物語」はPRIDEと似てるんですか?

佐藤 似てますね。総合格闘技は、「マニアックだ」「野蛮だ」といった感じで、迫害を受けてきたジャンルですから。今に至るまでPRIDEとニコニコ動画は似ていると思います。だから「あぁ、面白いな」と思ったんです。


── PRIDEのファン層はどういう方なんですか?

佐藤 最初はいわゆるプロレスファンがベースになっていたんですよ。すでに完成されたプロレスという層を奪ってきた。桜庭和志選手などが知られるようになってから、PRIDEはどんどん大きくなって世界に向けて開かれていくんだけど、一方で暴力的な映像という点で地上波で流せなくなったり、格闘技ファンが狂信化しすぎて一般の人が近寄りにくくなってしまう問題も出てきたりしたんだよね。


── 何かニコ動と似てますね。

佐藤 似ていますよ。今、現役で活躍している選手を見ても、昔のPRIDEを見て「あのリングに上がりたい」と願ってやってきた人が多いですからね。ファンも、運営とか主催者の物語性を要求する。そういった意味で似てるというのを、話を聞いて知りました。

 僕は格闘技に関わっていて何が一番面白かったというと、ファンだった。選手ももちろんなんですけどね。ニコ動もお客さんが面白いね。


── ちなみに普段、ニコ動は見られますか?

佐藤 見ますよ。僕が普段見てるのは「政治」。プロパガンダ職としては見逃せない物ばかりです(笑)。最近の国会中継とか、かなり面白いじゃないですか。

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