「ニコ動の主役はユーザー」
── 最初のビデオを記者発表会で披露して報道陣やユーザーの反応を見たとき、どういった印象を受けましたか?
佐藤 会場は「ざわざわざわ」ってなったくらいだったけど、書き込みをみたら、「立木のムダ遣い」ってコメントがあった。まぁねー、その通りだなと(笑)。
まず、ムダに壮大というところでちょっと笑いになるじゃないですか。で、笑うとみんな油断して、その中でグッと芯のあるストーリーを提示すると、すごく深いものに「見える」んです。レトリックだけでいうと、そういうことです。
その演出を作るためには芯のストーリーが必要になるんですが、川上さんがおっしゃることは常に明確でしたね。
── 毎回、テーマが出されるんですか?
佐藤 そうですね。「今まで半年間こういうことがありました。ここをこうまとめてください」って感じです。
例えば、1回目のニコニコ大会議では「いっぱい運営を出してユーザーに感謝する」というテーマだった。ニコニコ大会議はひとつのゴールでまとめだから、そこで一回みんなで「ありがとう」と言うようなビデオを作りたいと。
── 今回の東京2日目のオープニング映像では、ニコ動で知られている歌い手や踊り手さんがかなり数多く登場していました。あれはどういった意図ですか?
佐藤 あの映像では、歌い手や踊り手の方々がみんなの間で受け入れられている「ユーザー代表」ということを伝えたかった。その事実をきちんと紹介して、僕ぐらいのライトユーザーでも見て興味を持ってもらうというのが重要だと思うし。あとは「ニコ動の主役はユーザー」ってことも意識しています。
【ニコニコ動画(9)全国ツアー ファイナル2Days in 東京】オープニング映像
── 確かに、過去の「煽りV」を見ても、ユーザーの顔のカットがすごく多く挿入されています。
佐藤 すごく抜きましたね。ニコニコ大会議を夏、冬とやって一番面白かったのは最後の質疑応答だったんですよね。ネット上のリアクションも含めて。そういうシーンから数多くシーンを切りました。
「一期一会な感じがするかどうか」が大切
── 東京の大会議を見られて、どう感じましたか?
佐藤 終わったあとに、久々に嫉妬しましたね。「これは新しいわー」と思って。僕の中でいいイベントの基準は「一期一会な感じがするかどうか」ってことです。今日観ても、明日観ても、明後日観ても同じイベントってのは全然面白くない。だから「シルクドソレイユ」なんて全然面白くない。今日、この場じゃないと味わえないものっていうのがまず大切。
その上で、オリジナリティーがあるのが重要。ユーザー代表が舞台に上がっていて、46万人のコメント書き込みに彩られて「あれ、ちょっと待って、何か感動しちゃう」ってシチュエーションは世界中探したってないです。
── 大会議の特に2日目は、ユーザーも積極的に参加してイベントを作り上げようってところが強いように感じました。
佐藤 それは普通のライブでも、格闘技興行でもそうなんですが、でも観客が熱狂的になるぶん、排他的にもなってしまうんですよね。そういう姿をライトな人が見て共感を呼ぶかといえば、なかなかそうじゃない。ただの「オタ祭り」なんて嫌じゃないですか? それはどんなアーティストでもそうでしょ。面白さが増す一方で、分からない人は入ってきにくくなってしまう。
だから僕らがやるのは、その熱を失わないまま、排他的に見えないように外に出すことなんだなと。ムービーはそういう視点で作っています。