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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第108回

電子出版では著者=出版社=書店になる

2010年03月10日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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今年は電子出版元年

 注目のiPadは、4月3日にアメリカで発売され、日本でも4月下旬に発売されることが決まった。アマゾンのKindleも秋には日本語版が出る予定で、日本の出版社との協議が行なわれている。グーグルも全世界で200万点の本を電子化して配信するシステムを秋には発表するといわれ、マイクロソフトも秋に電子出版システムを発表するという。まさに今年は「電子出版元年」である。

DLsite.com

同人誌のデジタルデータを販売するDLsite.comでは1000円で販売した場合は、600円を作者が受け取る仕組みになっている

 しかし日本には、電子書籍を読むプラットフォームがほとんどない。携帯電話用はあるのだが、iPodで読める日本語の本は今のところほとんどない。そこで私は「アゴラブックス」という電子出版社(=電子書店)を立ち上げ、ライブドアと協力して日本語の電子書籍を配信することにした。

 その柱は、大きく分けて二つある。第1は既刊の本、特に品切れ・絶版の本を世に出すことである。日本の書籍流通は委託販売なので、在庫リスクを出版社が負う。しかも在庫には税金もかかるため、あまり売れない本は断裁してしまい、すぐ絶版になる。そこで著者や出版社と協力して、読むに値する本を電子書籍として復刊する。

 第2は、オリジナルの出版企画である。これは著者から提供された未発表原稿の電子化で、いろいろな形がありうる。よく知られているのはアマゾンの自費出版システムだ。これは著者が原稿をアマゾンに直接アップロードして出版するもので、同じようなシステムは独立系でも出ている。Smashwordsという電子書店も、著者から投稿された原稿をそのまま出版するシステムだ。

 実は、自費出版の電子書籍サイトは日本にもある。DLsite.comというオタク系サイトは、ネット上の「コミック同人誌」で、著者がコミックをアップロードして公開し、売り上げの一定率を著者に還元するシステムだ。いわば「コミケ」をネット上で開いているようなものだが、作品の水準は高く、売り上げは他の電子書籍サイトよりはるかに多い。

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