強風に悩まされた競技1日目
初日、8月8日の競技開始は午前6時。しかし、バルーン上昇が天候に影響され、第1回エントリー、チーム奥澤の「momonGa」がテザーへのクライマー取り付け(インストールと呼ぶ)を開始したのは、9時すぎとなった。ロボコン出場経験を持ち、唯一の個人チームとして参加した奥澤氏のクライマー上昇に期待が集まる。スタート時は順調だったmomonGaだが、途中で上昇スピードが遅くなり、ついにはテザーの途中で止まってしまった。ローラーがテザーのねじれを噛んでしまった上に、モーターが焼けてしまったとのこと。この後、奥澤氏は代わりのモーターを取りに、千葉県から神奈川県まで走ることになる。
続いて、名古屋大学SEチーム。前後にねじれ修正機構を組み込んだクライマーでエントリーしたが、スタートから13分、昇降を開始できず、時間切れとなった。モーターの動力をうまくメインローラーに伝えられなかったのだという。
この日最初の150m上昇を達成したのは、日本大学理学部青木研究室のチーム。6kgという参加チームの中では最重量級のクライマーだったが、6分25秒でゴールに達した。
このあたりで、競技場付近の風が強くなる。バルーンは吹き寄せられて、テザーは競技場の中央から運営者テント方面へと大きく斜めにかしいだ。もともと、参加条件の中には「多少の悪天候にも対応できること」というものがあった。実際にSEを運用するとなれば、天候の変化は当然予測されるものであり、少々の風や雨で止まっていては困る。とはいえ、強い風はテザーにテンションをかけ、テザーは板のように固くなってしまった。初めての競技会に参加した各チームは、予想を上回る悪条件に苦しめられることになる。
強風で中断された競技は、午後3時近くにやっと再開された。「何の大会だかわからないね、フーセン上げ大会みたい」と大野会長自らこぼしながら、バルーンを安定させるアンカーロープを移動するなどの作業に追われた。こうした競技、運営上のデータ出しも今回の開催の目的なのだ。
再開後は、テザーをすこし巻き取って、70mのショートレンジでトライアルとしてスタート。神奈川大学のTeam KSC-2、Team KSC-1が連続してトライしたが、KSC-2はギアが絡んで20m地点でストップ、Team KSC-1は1分25秒のタイムを記録し、翌日へ備えることとなった。
初日に残念だったのは、ドイツから参加したミュンヘン工科大学チームだ。クライマーは6kgに迫る最重量級だが、Webカメラも搭載し4kgのペイロードを運べるとパワーは十分。テザーをしっかりつかんで上昇の勢いも期待できるのだが、なぜか何度スタートしても上がれずに途中で止まってしまった。障害物を感知し停止するためのセンサーが誤作動してしまったとのことで、センサー交換で翌日に臨むこととなった。
トライアル競技で好調だったのは、日本大学羽田野研究室チームのSAKURANAだ。研究室では3mまでの上昇しかテストしていなかったというが、好調な動作を見せる。Webカメラを取り付けテストも含め、2回の昇降をバッテリー交換ナシでこなし、安定感があった。3回までトライしたのだが、振動で電源周りのコネクターが折れてしまった。「かなりの揺れがあり、振動対策が大切かもしれない」とのこと、経験・ノウハウをためながらのトライであることをうかがわせた。
初日の競技を終えて、かなり天候に左右されることが見えてきた。しかし、初の本番が各チームにもたらした経験は大きかった。会場に泊まり込んだチームは、夜中まで調整やテストを繰り返し、翌日に備えていたという。
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