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2050年の実現を目指して

宇宙エレベーター技術競技会「JSETEC2010」に密着!

2010年09月24日 12時00分更新

文● 秋山文野 撮影●小林伸ほか

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ケーブル完成はまだまだ。でも昇降機は作れる!

 宇宙エレベーターとは、地上と静止軌道(高度約3万5000km)を軽量・高強度素材のケーブルで結び、安定して地上と宇宙とを行き来する輸送機関を指す。21世紀に入り、米ロス・アラモス研究所の研究者ブラッドリー・C・エドワーズ博士が中心となって建造の具体案を示したことで、研究が活気づいている。

 この宇宙エレベーターだが、すでに日本の科学技術の展望のひとつとして位置づけられているのをご存じだろうか。NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が発表した「技術戦略マップ2009」では、ナノテクノロジー分野、カーボンナノチューブの応用案として、2050年ごろの実現が目されている。

経済産業省が発表した「技術戦略マップ2009」。ロードマップの2050年に宇宙エレベーターの項目がある

 ロードマップが示す通り、宇宙エレベーター実現のためには、カーボンナノチューブのさらなる高強度化・長繊維化が必要だ。日本をはじめ各国で研究が進んでいるが、必要十分なクオリティーに達するには、いましばらくの年月を要するだろう。

 しかし、待っている間にもできることがある。宇宙エレベーターの地上設備や昇降機などの研究開発を進めておくことだ。

 宇宙エレベーター実現を進める日本の推進団体 JSEA(一般社団法人 宇宙エレベーター協会)では、エドワーズ博士のプランを基本に、リボン状の「テザー(ケーブル)」上を移動する機構「クライマー」のひな形開発を進めている。

 さらに昨年からスタートした「JSETEC 宇宙エレベーター技術競技会」では、大学の工学系研究室を中心とした参加者チームが独自開発のクライマーの性能を競い合っているのだ。

 競技会では、ヘリウム入りバルーンで樹脂製の模擬テザーを吊り下げた垂直の走路を設置。クライマーがテザーを昇降するスピード、エネルギー効率、制御能力などの機能をテストする。テザーの長さは昨年の第一回大会の倍となる300m。年々伸ばしていく予定だ。加えて、今大会ではロープ状テザーへのチャレンジも行なわれた。

今回は昨年1基だったバルーンを2基に増やし、ベルトテザーとロープテザー両方のクライマー昇降を試みた。手前はベルトテザーの巻き取り機

宇宙エレベーター用語の基礎知識

宇宙エレベーター 地上と宇宙を結ぶ未来の輸送機関。現状唯一の輸送手段であるロケットに代わるものとして研究が進められている。上空約3万6000kmに位置する静止衛星から地上側と宇宙側にそれぞれテザーと呼ばれるケーブルを垂らしていき、地上に到達した時点で地上と宇宙を結ぶ一本の紐ができる。その紐に昇降機を取り付けることで輸送機関とする方法が現在有望視されている。

テザー 地上と宇宙を結ぶ紐の部分をテザーと呼ぶ。このテザーを伝って昇降機が上下する。宇宙エレベーターの実現には、このテザーの役割を担う強度を持つ素材が不可欠。現在、この強度を実現できそうなのは「カーボンナノチューブ」のみで、さらなる強度の獲得に向けて世界各国で研究が進んでいる。なお、宇宙エレベーター技術競技会で使うテザーは合成繊維製だ。

海外大学・社会人含め14チームが参加

 8月7~9日に開催されたJSETEC2010の参加者は14チーム。昨年から参加の日本大学青木研究室、日本大学波多野研究室、神奈川大学江上研究室、静岡大学山極研究室所属チームのほか、東海大学や東京電機大学チームが新たに参戦。

 また、NASAが賞金供与する米国の宇宙エレベーター技術競技会「Climber(PowerBeaming)コンペティション」参加経験を持つE-T-Cのほか、社会人チームも増えた。海外からは昨年の優勝チーム、ミュンヘン工科大学に加え、カナダからサスカッチュワン大学チームが参加。こちらもPowerBeamingを知る強豪校だ。

上昇するクライマー。トラブルはあっても、上空300mを目指してどのチームも工夫を凝らしているテザーがたるむと、クライマーは地面をこすったり、バウンドしたりといったトラブルが絶えない

 真夏の船橋で3日間にわたって行なわれた競技会だが、昨年150mテザーの課題を制したチームも、今年は厳しい競技条件に苦しめられた。初日は2つのバルーンの浮力でテザー2本を吊るしたものの、朝から風が強い。風速6mが限界となっている開催条件だが、風速3~4mでもテザーは風で横に大きく吹き倒され、ねじれるのだ。

 クライマーは基本的に、ローラーでテザーを挟み、摩擦の力で昇降する構造だ。たるんだり、引っ張られたりと、テザーのテンションが場所によって変わる状況では、モーターの力がうまく伝わらない。ねじれを噛んで止まってしまうこともあれば、止まらない振動がクライマーを破損させることもある。

 こんな条件のなか、参加チームはどう戦ったのだろうか。3日間の結果をチームごとに振り返ってみた。

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