フォント、箱にまで宿る気づかいは
女性へのプレゼントという発想から
またマイセレクトモデルには、365日それぞれディスプレイに違ったハートが浮かぶ待受画面が用意されている。1月1日や12月24日などの行事の日はもちろん、1日1日違うハートを表示して、違った毎日を意識させる。マイセレクトモデルの世界観を待ち受け画面でも表現している。
また、イルミネーション部のフォントも、26文字をさまざまなパターンのフォントで試したそうだ。
「紙に印刷したときと光らせたときでは、かなり印象が違います。視認性だけを考えると、ゴシック体の方がわかりやすいのですが、デザイン性を損ないます。そこで筆記体のようなオリジナルのフォントを作り、選べるようにしました」(後藤氏)
「フルネームが入っていると、プレゼントとはいえちょっと引きますよね。さりげなく、ちょっと使っていたらイニシャルが光る、と言うサプライズな演出に留めました。カスタマイズのアイデアはたくさんありましたが、ちょっとしたサプライズを越えると、ウェブ上で選ぶときと実際のギャップが広がったり、せっかくプレゼントしてもらってもセンスが悪い、と言われたらイヤになりますよね」(有田氏)
「店頭でケータイを買うと、どの端末も同じ箱に入れられていて、取り出した新しいケータイを手渡され、代わりに古いケータイを箱にしまい、その箱は紙袋に入れられます。箱を一度も見ないユーザーもいるのではないでしょうか。一方マイセレクトモデルは通販的に直接届き、ユーザーが最初に箱を見て、開けます。そこで専用の箱を用意しました」(後藤氏)
箱にもこだわりを見せるマイセレクトモデルは、ケータイをプレゼントするシーンをイメージしながら作られていた。既婚の夫婦ならばともかく、恋愛の場合はケータイを持っている事が前提なので、なかなかケータイをプレゼントするシーンが思い浮かばなかった。ただもしかしたら、プレゼントしたいケータイがなかっただけなのかもしれない。
N-08Aマイセレクトに流れるストーリーには、そんなケータイそのものと人との関係性を考えさせられるのである。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
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